太宰治や宮沢賢治、茨木のり子などの作品を手がける韓国の翻訳家が、「日本の恋の歌」をめぐって綴るエッセイです。(本の「そで」まんま笑)

 

やすらはで寝なましものを さ夜ふけて

かたぶくまでの 月を見しかな

赤染衛門『後拾遺和歌集』

 

この歌に続くエッセイのタイトルは「仕事場が必要だ」

ソウルで太宰治全集を翻訳したのは、近所のスターバックスだった話や、その後のシェアハウスで出会った人たちについてつづられます。

 

スユンさんは『おらおらでひとりでいぐも』も韓国語に翻訳していて、作者の若竹千佐子さんとの交流についても触れています。

 

千佐子さんはカレンダーに次の作品の構想を鉛筆できれいに書き込むそうです。

「私はこんなふうに、思いついたことを大きな字で書くのが好き。今は頭に浮かぶものを全部書いてる。ものを書かなかったら、私はとても寂しかったと思う」

 

言語には一種のマジックがある。心地よい言葉は私たちを心地よいところに連れていってくれるし、美しい言葉は美しいところに連れていってくれる。地獄を盛り込んだ言葉は地獄のようなところに連れていく。

 

말(マル・言葉)は人間の乗る말(マル・馬)だ。私たちは自分の言葉が進む方向に行く。これは真理だと思う。

 

頭を殴られたようなショックを受けた本として、松本清張のノンフィクション『昭和史発掘』、退屈したときに開くのは『源氏物語』。

 

1979年ソウルに生まれ、江戸川乱歩を研究した言葉の使い手が案内してくれる日本の文学はとても新鮮です。

 
 

2021年11月31日発行

亜紀書房

定価:1600円+税

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。