日経新聞の読書欄に『半歩遅れの読書術』というコラムがあります。

新刊書ではなく、あえて刊行後一、二年たった本を取り上げる『半歩遅れの』本紹介です。

 

書き手は、歴史や科学の専門家から、詩人、作家まで。

いずれも本読みのプロ中のプロです。

 

最近では、桐野夏生さん、斎藤幸平さん、あまんきみこさんといった方が、少し前に読んだ本、もっと前に読んだ、とっておきの本を紹介してくれました。

 

毎週楽しみにしていて、ここから読みたい本を見つけることもあるのですが、

なんと、このコラムが本になっていました。

 

連載開始から5年後の2005年、ⅠとⅡが同時に発行されています。

 

Ⅰでは、長田弘、久世光彦、川上弘美、坪内祐三など、Ⅱでは長谷川真理子、辻井喬、立花隆、河合隼雄、田辺聖子、城山三郎なんて名前もあります。

 

 

これは本好きにはたまらないです。

みんな活字中毒(笑)

(活字中毒って言葉はあんまり好きじゃないんですけど)

 

 

生命誌研究者の中村桂子さんが紹介するのは、「ガリレイの生涯」(『ブレヒト戯曲全集第4巻』)

科学が権力そのものになっていく時代に疑問を投げかけます。

 

立花隆さんの書評はやはりおもしろくて、紹介しているのは『戦中派焼け跡日記』(山田風太郎)

「この時代の諸相の変化を、実に克明に記録し、いかなる歴史書よりもあの時代のリアリティを感じさせてくれる」とあります。

このころは戦争史の本をよく読んでいたらしく、文春の先輩だった半藤一利さんとのエピソードも興味深いです。

 

Ⅱのまえがきには、中村桂子さんの「第二次世界大戦の末期から戦後にかけて子ども時代を過ごした世代が共有するのは、食べられるものと本が思うように手に入らなかったという体験である」という文章が引用されてます。

 

国際政治学者の袴田茂樹さんは、1960年代、思想統制の厳しいソ連に留学していました。

本に対する禁断症状に苛まれながら、どうしても読みたい本を知人に送ってもらっていたといいます。

 

ここには、本への飢餓感が痛覚のように滲み出ている。面白いから読む、という読書観とはまた、次元を異にする。教養とは本来、知識へのひりひりした渇望に支えられているはずのものだ。人の生と本とが運命的に結びつく数々の瞬間。それが本書の背骨を形作っている。

 

どの筆者も、競うように生き生きと好きな本について語っています。

また、読みたい本が増えます。

 

 

お読みいただきありがとうございました。