『プレヴェール詩集』より

 

 

わたしはわたしよ

 

わたしはわたしよ もともとこんなよ

笑いたかったら きゃっきゃと笑うわ

愛してくれれば 私も好きだわ

相手がかわって なんでわるいの

わたしはわたしよ もともとこんなよ

しかたがないわね しかたがないでしょ

 

もともと男に すかれるたちなの

ヒールはたかくて ウエストはほそくて

お乳はおもくて 目はつかれてて

けど そんなこと 男になんなの

わたしはわたしよ 好きなら好きでしょ

 

わたしのむかしが 男になんなの

そう あるひとと 愛しあったわ

恋しかできない こどもみたいに

恋しかできない……もう訊かないで

もともと男に すかれるたちなの

しかたがないわね しかたがないでしょ。

 

 

 

『天井桟敷の人々』『霧の波止場』などの脚本家で、シャンソン『枯葉』の作詞者でもあるプレヴェール。(1900-77)

 

本書は小笠原豊樹訳『プレヴェール詩集』(ユリイカ1958年/河出書房1967年/マガジンハウス1991)所収のすべての詩篇と、『唄のくさぐさ』(昭森社1958年)所収の7篇とシャンソン『枯葉』を追加して文庫化。マガジンハウス社所収の訳者解説と谷川俊太郎さんがプレヴェールについて書いた文章を収録。

 

あまりにも人間的なプレヴェール、あまりにも長所と短所が渾然と融けあいすぎているプレヴェール、あまりにもいい人たちとわるいやつら、いいこととわるいこと、このすばらしさを知りすぎているプレヴェール!こんな文句のつけ方をするのは、勝手にプレヴェールを偶像にまつりあげようとする僕だけでしょうか。

好きな詩人について書くのは難しいものです。

(ユリイカ1959年8月号:『ほれた弱み』谷川俊太郎)

 

 

2017年8月18日第一刷発行

岩波書店

定価(本体840円+税)

 

 

お読みいただきありがとうございました。