たかのてるこさんといえば、入社試験の面接で「ガンジス河で泳いできました」と言いたいがために単身インドに旅行し、その経験が『ガンジス河でバタフライ』という本になり、ベストセラーとなった、いわば成功した人というイメージがありました。

 

ところが、この本によると、たかのさん自身、幾度となく「自分なんて消えてしまいたい……」と落ち込み、うつ状態まで追い詰められ、自分を責めてばかりいたというではありませんか。

 

だからこそ、今、死ぬほど辛い思いをしている人に、人からどう思われようが、「自分に劣等感を抱かせるような人や場所とは、縁を切って(距離を置いて)逃げていいんだよ!」という思いを伝えたくて、この本を書いたのだそうです。

 

たかのさんは、「自分を守るため」に、いろんな場所や、いろんな人から逃げてきたと言います。そもそも、人類は「逃げる」ことで生きのびてきたとも。

 

アフリカで生まれた人類が世界中に広がっていったのは、「今いる場所」が何かしら居心地が悪かったからです。

 

「生きのびるために逃げる」というのは、言い方を変えれば、「理想の場所を求めて旅立つ」前向きな生き方なのです。

 

自殺の報道を聞くたびに、胸が痛むというたかのさん。

まず、「人間のつとめは生きのびることだよ」と教えてあげてほしい!と祈らずにはいられないと言います。

 

「いじめ問題」は、学校や職場だけではなく、無意識に自分自身にもやってしまっている。日本人は自分をいじめる傾向が強く、怒りや悲しみが、外に向かう(人を傷つける)のではなく、内に向かって(自分を傷つけて)しまいがちというのが、世界中を旅した、たかのさんの意見です。

 

だからこそ、日本は「犯罪率の低い国」ではあるものの、「自殺率が高い国」で、自分を守るために、家にこもっている人(ひきこもりの人や、不登校の子ども)が多いのではと思います。

 

自分を大事にできるのは、自分自身だけ

 

 

 
 
逃げろ 生きろ 生きのびろ!
 
 
表紙とタイトルから、難民のような人たちが戦場となった国から逃げるような内容を想像していました。
難民も大変だけど、日本にいたって逃げなきゃならないときがある。
そんなときに思い出してほしい本です。
 
 
 

たかのさんからの力強いメッセージです。

 

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『ガンジス河でバタフライ』は2007年、脚本・宮藤官九郎、主演・長澤まさみでドラマ化もされました。ご存じの方もいらっしゃるかと思います。

読み直してみたら、やっぱりおもしろかったです。

文庫版の巻末にはたかのてるこさんの年表があって、つらい幼少時代の記録も綴られていました。

 

2019年8月30日 初版発行

テルブックス

定価:本体500円+税