大坊勝次(だいぼう・かつじ)さんは、1947年岩手県盛岡生まれ。

1972年に「だいろ珈琲店」で基礎を学び、1975年に青山「大坊珈琲」を開業。

2013年老朽化によるビルの取り壊しのため、惜しまれつつ閉店。

 

森光宗光(もりみつ・むねお)さんは、1947年福岡県久留米市生まれ。

1972年吉祥寺「自家焙煎もか」入店、1977年福岡市中央区に「珈琲美美」を開業。

2016年ネルドリップ普及セミナーの帰途、仁川空港で倒れ、急逝。

 
 
一杯のコーヒーに、人生のすべてを捧げるふたりの職人。

会話らしい会話もしたことがないのに、同じ道を行く「親友」として互いを認め合う間柄だったといいます。

 

対談1 2013.10.15 「珈琲美美」にて 大坊が森光を訪ねた

対談2 2013.11.25 「大坊珈琲店」 閉店まであと1か月

対談3 2014.1.27 「珈琲美美」にて 店を閉めた大坊が森光を訪ねた

 

珈琲の焙煎の苦労、ドリップのことだけでなく、音楽の話、絵の話など、ああ、珈琲店というものは総合芸術なんですね。

 

 

森光さんという人が頭の回転が速い人で、「閉店してどうするの」なんて聞いた後、大坊さんがもごもご言ってると(大坊さんは愚直な印象)、「海の上のピアニスト」というイタリア映画見たことある?といきなり聞いたり。

 

珈琲店を開くにあたり、珈琲に関係する書物をありったけ集めたという森光さんに、「いや、それはやったことなかったな」と大坊さん。

「今初めて気づいた」「すごくうしろめたいですよ」なんて言ってたり。

 

テンポが違うおふたりなんですが、わかり合えていることが紙面からでも伝わってきます。

 

人々は珈琲店でコーヒーを飲む時、ちょっと立ち止まります。立ち止まって、これまでことを思い浮かべます。これからのことを考えます。珈琲屋がお渡しできるものは、一杯のコーヒーだけです。一杯のコーヒーが、少しでも人の心を鎮められるとすれば、珈琲屋にとってこんな嬉しいことはありません。

 

カフェでもなく、喫茶店でもなく、珈琲店。

週末行ってみたくなりました。

 

 

発行:2018年5月30日

新潮社

定価:本体2500円(税別)