1951年フランス生まれ。歴史人口学者。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析、ソ連崩壊やリーマン・ショック、イギリスのEU離脱などを予見したことで広く知られる。

 

現代を代表する知性といわれるトッドが、何を読み、何を考えているか、どんな思考過程をたどるのか、分かりやすく楽しそうに語ります。

図まであるんだよ。

 

序章 思考の出発点

知らないことを知ったときの感動こそが思考するということ

 

1 入力

とにかく私は興味を持ったことを調べるのが好きなのです。

仕事の95%読書だといいます。

大事なところには切手を貼ります。なぜ切手?付箋は使わないそうです。

 

2 対象

歴史こそが「人間とは何か」を語りかけてくれる

 

3 創造

真にオリジナルなアイディアというのは、人々に衝撃を与え、社会を揺さぶるようなものでなければなりません。

斬新なアイディアは、世の中から受け入れられないことが多い。そのため、どこかに必ず自分を評価してくれる人がいると信じること、その存在に気づくことが大切です。

 

4 視点

まともではない思考をしてみたり、とっぴな関連性を見出したりということができなければいけないのです。

軽い精神障害というのは研究にとってアドバンテージになる可能性もあります。

トッドさん自身、アイディアがひらめくのは鬱状態のときなんだとか。

 

5 分析

未来を見たいと思うのであれば、一歩下がって歴史的な視点から考察するのは必要不可欠なことです。

 

7 倫理 批判に対峙する

フランスの大学制度について、その後、どれだけ稼げるかというくじ引きへの参加権にすぎない、知性がフォーマットされ、自由に思考することを阻止すると糾弾します。あら、日本と似たような状況ですね。

 

批判を受けるという特権

「たとえば私の長女は4年も私を無視していた期間があります。そして、あるとき、私がメッセージを送ると、ひどい罵倒が返ってきました。そのときに私は思ったのです。反応があるということはいいことだと。そしてそれからしばらくして私は彼女と和解することができたのです」

トッド、『娘のトリセツ』読めよ~

個人的エピソードも満載です。

ル・クレジオの話も出てくるんだよ。

 

思考法は意外と地味。

ただ、その膨大な読書と歴史に関する知識、そこから生まれる直観的なひらめきが常人とは異なります。

 

研究者の視点というのを誰もが持つ必要はないでしょうし、それは現実的ではないでしょう。

私が気になったのは、市民としての読書という発想です。

過去を知るための資料は誰もが手にすることができます。

コロナで社会が揺らぐ今、歴史を学び、どうするかを自分で考え、決断することはとても大切なことだと思いました。