この本は『女性自身』という雑誌での連載をまとめたものです。
銀行や病院のロビーで見かける、皇室と、芸能人と料理のことが載っているあの雑誌です。その女性自身から「書評」の連載を頼まれたとき、さてどうしようと考えました。
銀行の待ち時間に女性週刊誌をめくっているとき、人は書評になんか目を通すかなあ。俺なら読み飛ばしちゃうな。せっかっくそういう雑誌なんだから、読みたいのはゴシップ。有名人がどうした、こうしたを知りたい。
そういう読者相手の、つまりアウェーな場で少しでも読んでもらいたく、この連載は「有名人の愛読書を読んでみる」というものになりました。~はじめに~
おもしろいです。
芦田愛菜の愛読書『ABC殺人事件』(アガサ・クリスティー/堀内静子訳)
安倍晋三の愛読書『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹)
有村架純の愛読書『悪夢の観覧車』(木下半田)
高橋一生の愛読書『檸檬』(梶井基次郎)
北川景子の愛読書『塩狩峠』(三浦綾子)
有名人の愛読書を知るのも楽しいですが、書評がすごくおもしろいんです。
書き出しの部分を少し引用します。
長澤まさみの愛読書『わたしが・棄てた・女』(遠藤周作)
長澤まさみは愛読書が多い。しかも、なんだろう、傾向が見えない。雑誌のインタビューや対談で彼女が挙げた作品をちょっと列挙してみる。
吉本ばなな『キッチン』、村上龍『限りなく透明に近いブルー』、本谷有希子『生きてるだけで、愛。』、北大路公子のエッセイ、水木しげる『劇画ヒットラー』、さらに『ドラえもん ひみつ道具大辞典』などなど……。
吉岡里帆の愛読書『戯曲 吸血姫』(唐十郎)
ガールズバーでカウンター内の吉岡里帆にビールを差し出され「唐十郎の『吸血姫』が好きだ」と言われたら、どうする?ためらうだろう。口説くか、撤退か。
小池百合子の愛読書『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか)
この連載開始以来のてごわい本だぞ、とまず思った。著者が連名で六人。いずれも大学教授。かつての日本軍の「失敗」理由を仔細に検証する、学術的な書物だ。
カルロス・ゴーンの愛読書『愛と心理療法』(M・スコット・ペック/氏原寛・矢野隆子訳)
これまでたくさんの誰かの「愛読書」を読んできたが、一番、その人の音声で聞こえてくる本だった。「へえ、ゴーン、恋愛は妄想って断じちゃうんだ」とかついつい思ってしまう。言ってるのゴーンじゃない。ペックさんなのに。
この調子で最後までぶっ飛ばす書評です。
死後くんのイラストがまたいい。
ブルボン小林って誰だと思ってググったら、ああ、なるほど、あの人でした。
おもしろいはずだわ。
数年かけてコツコツ読んでいくうち、有名人の読書には独特の傾向がある気がしてきました。ここで紹介する全冊に共通するのは、どの本にもパワーがある。だからこの本自体、読むだけで元気になれる読書ガイドになりました。
本書を読んでも有名にはなれません。でも、有名人って、有名であるって何なんだろうということが、少し分かってくると思います。どうぞ気楽に、好きな人のところから読み進めてください。~はじめに~