人間というこのいとしくて厄介きわまる存在の、その眞実を描こうとすれば、当然、細部、深部を見据えて抉ることになります。
私は昔、大先輩作家の室生犀星さんから、こんな葉書を貰いました。
「小説というものは、先ず近親を討ち、友を討ち、而して己を討つものです」
そんなエゴイズムを持っているのが小説家というものです。世間の(常識ある人たちの)毀誉褒貶に鈍感であることが必要なのです。人を傷つけ、そして自分も傷つき、その傷口を晒すのが小説家です。私はそういう考えで書いてきました。―佐藤愛子
人間というこのいとしくて厄介きわまる存在の、その眞実を描こうとすれば、当然、細部、深部を見据えて抉ることになります。
私は昔、大先輩作家の室生犀星さんから、こんな葉書を貰いました。
「小説というものは、先ず近親を討ち、友を討ち、而して己を討つものです」
そんなエゴイズムを持っているのが小説家というものです。世間の(常識ある人たちの)毀誉褒貶に鈍感であることが必要なのです。人を傷つけ、そして自分も傷つき、その傷口を晒すのが小説家です。私はそういう考えで書いてきました。―佐藤愛子