詩人、小説家、劇作家の平田俊子さんが静岡新聞に連載したエッセイです。
【春は化け物】から
「春はあけぼの」という表記に慣れているわたしたちですが、岩波書店「新日本古典文学大系」では「春は曙」
印刷機やコピー機ができるはるか昔、いろんな人たちが「枕草子」を筆で書き写しました。
写し間違いは当然あるだろうし、清少納言が書いていないことをちゃっかり書き加えちゃったりする人もいたかもしれません。
今わたしたちが読んでいる「枕草子」はオリジナルとはかなり違っているそうです。
「春は揚げ物。やうやう熱くなりゆく鍋際、すこしたぎりて、紫だちたる茄子の細くたなびきたる」まで変えてしまうとさすがにまずいだろうなと平田さん。
宮仕えを辞めたあとの清少納言の様子はよくわからないそうですが、かなり貧しい暮らしだったとか。
「枕草子」はベストセラーなのに印税は一銭も入らないから、春は化け物~と出版社の廊下をさまよい歩いているかもしれませんと締めます。
ほかにも、図書館で借りた本の受け取り館を間違えたり、
ツイッターで森山未來の芝居のチケットを買って、売ってくれた人と隣に座って観劇したり
ドジョウが好きでもないのに浅草飯田屋に行って失礼なことを考えたり……
あとがきに書かれた枕の人類への反逆もおもしろいです。
お読みいただきありがとうございました。