『二人のロッテ』や『飛ぶ教室』で知られるケストナーに『人生処方詩集』という作品があります。
ケストナーが、自分の詩に対して、「私生活の治療にささげたもの」として分類した詩集で、「年齢が悲しくなったら」「孤独に耐えられなくなったら」と、さまざまな症例によって、自作のたくさんの詩を紹介していくというものです。(岩波文庫)(詩の森文庫)
これは、谷川俊太郎の詩で、同じことをこころみたものです。
選者は劇作家の鴻上尚史さん。
・さみしくてたまらなくなったら
・毎日、しかめっつらだけになったら
・愛されなかったら
・愛されたら
・大切な人をなくしたら
・家族に疲れたら
・歳を重ねることが悲しくなったら
・生きるパワーが欲しくなったら
症例別に詩が紹介され、鴻上さんのエッセーが挟まれます。
ご紹介したいのは「mamaまんま」から「おっぱい」
せっかちなて ためらうて
ものなれたて おさないて
どんなてにもちぶさはやさしい
ちぶさはつぐなう
ちぶさはいやす
ことばのおよばぬところで
【鴻上さんのエッセイ】
どうしてこんなにおっぱいが好きなんでしょう。母親のおっぱいが好きで、恋人じゃない人のおっぱいも好きで、とにかく好きです。(~略~)こんなにも無条件に好きなのはちょっとないと思います。おっぱいに関してはもう言うことはありません。とにかく好きなんです。
人は言葉で考え、人をたたえ、人を傷つけ、自分を傷つける。
おっぱいは人が生き物であることを思い出させてくれます。
思い出す詩はなくても、歌の一節に励まされることはあるのではないでしょうか。
歌詞も詩ですと、鴻上さんは言います。
みなさんが思い浮かべるのはどんな言葉なんだろう。