2020年の宿泊業倒産が前年比5割増となる中、「夏には黒字経営に戻した」という星野リゾート。(日経新聞3.8)
『星野リゾートの事件簿』に続く『事件簿2』では、厳しい状況で旅館やホテルを立て直していく様子がスリリングに語られます。
・グランドホテルから転身した「OMO7旭川」
・景観にこだわり、寒いという苦情が相次ぐ「界箱根」
・経理担当が踊り出したという「星のやバリ」
11のホテルや旅館が登場します。
「リゾナーレ熱海」はコロナでビュッフェ中止を余儀なくされました。
宿泊者アンケートでは、ビュッフェがなくて残念、予約の問合せでも、ビュッフェがないなら行かないとの声が相次ぎ、どうにかして再開できないかとスタッフたちが話し合いを重ねます。
家族連れ客が多い同ホテルで、問題になるのは行動が読めない子どもたちでした。
あらかじめ子どもセットをつくり、親の1人が子どもに食べさせている間、もう片方の親がビュッフェの食事を取りに行くという方法で、混雑回避をねらいます。
残量調査を行い、子どもがより喜んで食べるメニューを探ったところ、意外にもハンバーグは不評で、芋の蒸し焼きが人気だったそうです。
最近のお子さん、なかなかいいセンスしてます。
「あきらめるのではなく、どうしたらできるかをスタッフと考え続けたのがよかった」
「界熱海」は2008年、江戸時代から続く「蓬莱」から引き継ぎ、2012年「界」としてオープンした宿です。(このあたりは既刊『星野リゾートの事件簿』に詳しいです)
老朽化した建物が問題になっていました。
なかでも懸案だったのは、本館と別館をつなぐ「登竜坂」という約180段の階段です。
宿泊客が高齢化する中、バリアフリーの観点からも、これ以上、お客様にこの階段を上り下りしてもらうわけにはいかないとの思いもありました。
「蓬莱」は星野社長が学生時代、全国の旅館を巡ったとき立ち寄った、思い出の旅館でもありました。
女将の古谷青遊さんが花を活けていて、誰も立ち入ることができない雰囲気を醸し出しているのを目にし、「ああ、これが日本旅館だ」との感慨を持ったそうです。
星野社長の原点ともなった宿でした。
これだけの宿がいつの間にか閉まっていたではもったいないと、2019年2月1日から3月31日まで「梅と芸妓の大千穐楽」と題し、閉館イベントを打ちます。
現在は改装のため、休館になっていますが、どんな姿を見せてくれるのか楽しみです。
一店一店ごとに地元との関わりも、常連客とのつながりも異なる宿泊業。
丁寧な、人を活かした仕事が、困難を乗り越え、難しい中で事業を継続させていくのですね。
感動の一冊です。