インド洋、マダガスカルの東に位置するモーリシャス島。

面積は沖縄本島の1.5倍、年平均気温は24~29度。

多くの観光客が訪れる「インド洋の貴婦人」と呼ばれる島だそうです。

 

この島を舞台に2人の語り手が交互に語る、ある一族の物語です。

美しい島の背後にある歴史が少しずつ明らかにされます。

絶滅した鳥ドードーやサトウキビ畑に連れてこられた奴隷たち。

 

なんと美しく、静かで、力強い小説なのでしょう。

語り手と登場人物がとても魅力的なのです。

 

作者のル・クレジオは1940年、南仏ニース生まれのノーベル賞作家。

自身もフランス革命期にモーリシャスに渡り、後にフランスへ引き揚げる祖先をもちます。

 

訳者解説によれば、「生まれ育った土地を離れ、好きだった景観をもう見られなくなった人の苦痛を十分に想像できた」そうです。

 

語り手の1人は島で生まれたのですが、後にフランスに渡り、戻ることはありませんでした。

 

「あなたがこれ以上先には行かないという場所までの、もう他に行く場所はないという場所に行きつくまでの、道のりは長いわよ。それが人生よ、あなたは出発するけれども、どこに行くのか、いつまで旅が続くか知らない」