いつかの雨の日
小さな折りたたみ傘で
君と駅まで歩いた帰り道。

紫陽花が群れる。

たまに当たる君の肩に
ドキッとしながら歩いた
あの道は都市企画で
無くなってしまった。

紫陽花は伐採され
真新しい無機質な壁が
真っ直ぐに伸びている。
.
.
.
.
.
何年ぶりだろう?
君から連絡が来て
駅前のカフェでお茶をした。

君の左手の薬指には
指輪が光っていた。

そりゃそうか。
景色も変わっていくんだ。
君も変わっていくはずだ。

変わってないのは…僕だけか。

対面のテーブルで
君の顔を正面から見た時
僕は学生時代
君の横顔ばかりみてたんだなぁ….
今更ながらそう気づいた。

愛の余白を埋められずに
隙間だらけの理想の恋を
ずっとひっぱりながら
いつか忘れてしまって。

そんな僕の記憶を
また思い出させるなんて
君は残酷過ぎて
頼んだアイスコーヒーのグラスみたいに
僕の心も涙で濡れている。

君は楽しそうに
学生時代の話に興じながら
僕に向ける悪戯っぽい笑顔は
ちっとも変わってない。

「ねぇ?聞いてる?」.
.
「ん?あ、あぁ。」.
.
「あ、〇〇君って元気なのかな~」.
.
.
.
.
.
傍からみたら
今だけは僕たちは
恋人同士に見えるのかな?

今日だけは、そう見えるのかな?

また明日からは
別々の人生で別々の道。
今日はきっとそのクロスロード。

君にとっては
クラスメイトに
再会したただの1日。
僕にとったら
意識しすぎた重い1日。

君を駅まで送った帰り道。

自転車を押しながら
無機質な壁にそって進む。

あの頃の思い出は
胸にしまっておこうと思ったけど
太陽が沈んで南の空に
浮かび上がってきた夏の星座に
そっと隠すことにしよう。

今日散々君の顔を正面から見たのに
星座に浮かぶ君の顔は
やっぱり横顔なんだ。