重い気持ちを引きずったまま
サンフランシスコでの講座が終了した。

今回の講座を企画したS氏の提案で
旅の最終日に、先住民の聖地と言われる
シャスタ山の麓まで散策する計画が立てられていた。
ドン底状態の私は、散策を楽しむ余裕などなく
無気力のまま、何も考えず、ひたすら歩き続けた。
ふと見上げると、富士山に似た形の山が
遠方に見えてきた。
富士山のように稜線はなだらかではないが
崇高な山に感じられた。
山を眺めているうちに、涙が私の頬を伝った。
この涙は、道に迷った時の困惑の涙や
焦燥感に襲われた時の悲壮の涙とはちょっと違っていた。
とにかく山を眺めているだけで涙が出てきた。
やがて、涙が止まり、どこかすっきりしている自分を感じた。
浄化されたような、そんな気分だった。
ふと、横を見るとS氏がいた。
「すっきりした?」と聞いてきた。
心中をピタリと言い当てられ、驚いたが
さりげなく目配りしてくれたS氏の心遣いが嬉しかった。

しかし、私の地獄感情は、かなり重症だった。
結果的には、失意をバッグに詰めて
帰国することになった。

次回につづく。