思いの外、サンフランシスコは寒かったが
風がさわやかだった。
ヒッピーの発祥の地だけあって
辺りは自由な雰囲気に溢れていた。
大学が集積し、
スーパーには色とりどりのオーガニックの野菜や果物が、所狭しと並べられていた。

サンフランシスコでメンバーに会うと
私のような受講生の他に
多くのサポートスタッフも参加していた。
受講会場は、韓国のお坊さんがいる
お寺が当てられていた。
お寺と言っても、日本のようなお寺ではなく
事務所のような感じだった。
インストラクターは、元学校の教師だったいう
初老の女性だった。柔和な優しい表情で迎えてくれ、いつも休憩用にと、手作りのマフィンを
持って来てくれていた。

円座になって、自己紹介や講座の説明がなされ
さっそく手技の練習となった。

ちゃんとインストラクターの手技を
注視して、理解するようにするのだが
いざ、目の前のボディをみると、
頭が真っ白になり
手が動かない。
誰と組んでも、何回試みてもダメだった。
これでは、ボディになる人もたまらない。
気がつけば、私と組むことを避ける人が多くなった。(私はそう感じた)
それでも練習はしなくてはならないので
そばにサポーターの人についてもらい
ひとつひとつ指導を仰ぎながら
手技を行った。
気持ちはオドオド、手先は戸惑いで
ボディになった人にも、それが伝わり
指摘された。

手技練習が終わった後
何人かでグループになって、イメージを使った
メンタステックスが行われた。
テーマは、楽しかった子供の頃を思い出して
ふたりが一組になって、会話をしたり、一緒に動いてみたりをすることになった。
Mちゃんとペアを組むことになった。
私は、手技がうまくいかなかったことで
自己嫌悪にかられ、焦燥感に苛まれていた。
そんな中、楽しかった子供時代と言われて
ムカついた。
私の子供時代は、楽しいことなどひとつもなかった。
子供時代=楽しい。という決めつけた構図にも
腹立ちを感じた。
その時、私の苛立ちは極限に達していた。
思わず、Mちゃんに大きな声で
「子供時代は楽しいと決めつけないで❗」と
叫んでいた。
その声に驚いたMちゃんも
大声で泣いてしまった。
異様な雰囲気に、周りの人たちも驚き
私たちに駆け寄ってきた。

私はたまらなくなって
部屋を飛び出してしまっていた。
さすが、これでは、あまりにも大人げない。
思い直し、M ちゃんに謝った。
Mちゃんも、私が大声を出したことで
自分自身のつらかった光景が浮かび
泣いてしまったと詫びてくれた。
みんないろんなことを抱えて
生きているんだなあと改めて、知らされた。
それでも、私の自己嫌悪、焦燥感は
消えなかった。
どこか、周りから浮いているのも感じ
疎外感も募った。

食事を取る時や、車での移動中の車中でも
私は、ひとりで黙って過ごした。
宿泊先近くのスーパーに出かける時も
最後尾に連なり、気がつけば
みんなは帰ってしまっていて
私は、ひとり取り残された(と思った)
言葉の通じない暗い夜道を
トボトボ歩いた。
途中道に迷ったのに気づき
目から大粒の涙が溢れた。
前来た道に戻り、
ようやく宿泊先にたどり着いた。
玄関先に着くと、メンバーが集まり
心配そうな顔で迎えてくれた。
無視されたと思っていたけど
みんな心配してくれていたんだ
と、自分の猜疑心を恥じた。

次回につづく。