私の祖母は、私が17歳の時に死んだ。
祖父は、私が20歳の時に死んだ。
祖母の時は、私はばーちゃん子だったので
とても悲しかった。
だけど祖父の時は、涙の一滴も出なかった。
私は、祖父が嫌いだった。
いつも威張り、怒ってばかり。
母をなじり、罵倒していた。
孫の私にも優しくすることもなかった。

でも、父は違っていた。
父はひとりっ子だったが
祖父母に厳しく育てられた。
幼少の頃から、学校に行く前に
家の拭き掃除を済ませてからでないと
学校に行くことができなかった。
高校を卒業後、祖父が始めた売薬業を
受け継いだ。

祖父は仕事の面では、長けていた。
野心家で精力的な祖父は
販売網を拡げ、売上を伸ばしていた。
父は、そんな祖父を尊敬していたのだ。
いま、自分がその仕事を引き継ぎ
それを守れるのも祖父のおかげと信じ
最後まで祖父に畏怖の念を抱いていた。
祖父が死んで、人前では毅然としていたが
時折、席をはずし、涙を流していた。
私はその姿をみて、とても複雑な気持ちになったのをいまでも覚えている。
正直、いまでも祖父のことは好きではない。
だが、私の大好きな父が祖父が好きだったのは間違いない。
私の血の中に、祖父の血が混ざっているのも
間違いない。
いつの日か、寛大な大人の人間になって
祖父を好きになることができるようになるのだろうか?