串本から伊勢志摩には
どのように行ったか、よく覚えていないが
途中から宿舎へはバスで向かった記憶がある。
と言うのも、そのバスには、珍しく男性の車掌さんが同乗していたのだ。
しかも、若くかなりのイケメン❗
私たちは、見とれていて、
おもわず降りるのを忘れてしまうところだった。 
そんなものだから、降りた際、
四人とも溝に落ちてしまった。
私たちは顔を見合わせて
笑わずにはいられなかった。
たが、辺りを見渡せば真っ暗。
ここからどう行けば、宿舎にたどり着くのか
検討がつかなかった。

途方に暮れていると、一台のトラックが止まった。
運転手が、中から
「どこまで行くの?」
「伊勢志摩のユースホステル」と言うと
「そこなら途中だから乗せて行ってあげるよ」
と言う。
私たちは迷った。もしやいかしげな人。
どこか知らない所に連れていかれるのでは。
でも、このままでは宿舎にたどり着けない。
夜も段々更けてきている。
最終的には、
四人だから大丈夫だろうと
いうことになって、乗せてもらうことにした。
乗ると言っても、後ろの荷台だった。
トラックは真っ暗な中、
どんどん山の方に登って行った。
やっぱり、よからぬ所へ連れ込まれるのか
と、私たちはますます心細くなった。
突然トラックが止まった。
どうしよう。と私たちは手を繋ぎ
怖さに震えた。
「着いたよ」と前で運転手が言った。
恐る恐る降りると、目の前に
ペンション風の建物が立っていた。
これこそ、私たちが夢に描いていた
ユースホステルだ❗
私たちは、これまでの恐怖は一瞬のうちに吹っ飛び、お礼もそこそこに宿舎に走っていた。
中に入ると、ペアレントと先客に歓迎され
食事も大層美味しかったのを覚えている。
その後の、くつろぎタイムも
みんなで歌を唱うなど、今回の最後の宿に
ふさわしい満足のいくものだった。
私たちは、ひさしぶりに気持ちのいい朝を迎えた。
高台に建つ宿舎の窓からみる景色も
あご湾を望み、爽快そのもの。
私たちは宿舎を後に、あご湾展望台まで登った。
展望台からみる景色は最高だった❗
複雑に入り混んだ海岸線。
ぼつんと浮かんだ岬と島々。
日本にもこんなところがあるのかと
私たちは、感動し、言葉もなかった。
荷物を置き、下にあった自販機まで飲み物を買いに降りていくことにした。
そうすると、2~3人が、私たちの荷物の辺りでうろうろしていた。
私たちは、もしや荷物が盗まれるのでは、
と思い、慌てて上に登った。
すると、彼らはその辺の景色を眺めている人に過ぎなかった。
私たちはバツが悪く、不自然に
景色を眺める仕草をとるしかなかった。
あぁ、昨夜とおんなじだ。
またもや私たちは顔を見合せた。
誰も何も言わなかったけど
四人とも、この時ほど自分たちを田舎者だと
自覚したことはなかったと思う。

次回につづく。