※センシティブな内容や、下の話を含みます。
うつ病の症状といえばたくさんの症状がありますが、その中の一つに、心気妄想というものがあります。
実際には身体の病気はない、もしくは軽微な身体症状にも関わらず、重大な病気だと思いこんでしまう、不安になってしまう
健康なのに、命に関わる病気だと思い込んでしまう、といった症状です。
臨床経験の肌感覚ですが、高齢者のうつ病患者さんには比較的「妄想」と呼ばれる症状が出やすい印象があり、心気妄想は特に注意が必要な妄想の一つという印象でした。
まず、前提として
命に関わる病気だと思い込んでいるため、治療をしても意味がない、治るわけないと思い込み治療を拒否する患者さんが多くいます。
そんな中で、比較的多い訴えとして
便に固執する患者さんが驚くほど多くいます。
便が出ない、と毎日繰り返すのです。
(ここで注意が必要なのは、高齢者の患者さんが便秘になりやすいのは事実なので、実際に便秘なのか、という観察は必要です。うつ病の薬や意欲低下で水分摂取が減ったり、活動量も落ちるので元気な高齢者よりも便秘になりやすいです。)
(実際に便秘の場合はイレウスのリスクも高くなるので対応が必要です)
心気妄想である場合、実際に出ている所を確認しても、少しあとには全然出ていない、ちょっとしか出ていない、と修正困難なことが多いです。
下剤などを利用して、下痢になった場合にも、水分しか出てない、固形が詰まったままだ、など訴えられます。
この症状が困るのはこの後です。
便が出ない、と心配しすぎるあまり、腸が詰まっている、腸が詰まるかもしれないと思い始めます。
このまま死ぬかもしれない、病気になるかもしれない、腸が腐るかもしれない等々、不安焦燥に襲われます。
そうなるとどうでしょう。
出ないなら入れてはいけない、となるわけです。
ご飯を食べなくなります。
水分を取らなくなります。
そうすると衰弱していき、本当に命の危険が出て来てしまうのです。
ご家族からすれば最初は実際には出てるから大丈夫かな、と思われるかもしれませんが、早めに病院に連れてきてもらったほうがいい症状の一つです。
また、昔からお世話になった医師がよく言っていた言葉があります。
「便固執系は注意が必要だ」
細かいエビデンスは多分ないんですけど、
私も肌感覚でわかるくらい、自殺を図る患者さんが多いのです。
自分は病気だ、もう治らないんだと思い込んでしまうなど人生に絶望してしまうのだと思います。
もちろん、便に固執する患者さんだけではなく、心気妄想をはじめとする妄想などから不安焦燥が強い患者さんは注意が必要なんですが、
今回は便に固執する患者さんについて書かせて頂きました。
参考にしていただけると嬉しいです。