精神科では、希死念慮がある方、興奮状態の方に対しての看護でよく、安全を確保する、と書いています。

看護師もよく言います。

言葉でいうと簡単ですが、この安全を確保するのがとっても難しい。


先に希死念慮のある方の場合から考えます。

希死念慮は他の記事でも触れているので、内容の被りがあることご了承ください。


以前も書きましたが、全裸で何もない部屋にでも入っていただかない限り、自殺のリスクはほぼゼロにはなりません。


衣類は全て紐になります。

靴にも紐があります。

シーツやカーテンも紐になります。

配管や、ベッド柵、椅子があれば紐をかけられます。



洗剤やシャンプー類も危険物です。

ということは、トイレや洗面所に置いてある石鹸も危険です。


もともと、精神科病棟では他の病棟に比較するとリスクは下げられた作りになっています。

私が働いていた病棟でいうと

ドアノブはカバーがかけられ、紐をかけられないようになっています。

必要ない中央配管(酸素や吸引)や、コンセントは患者さんが触れることができないようになっていました。

使用しない部屋や患者さんが入れない部屋は基本的に鍵をかけます。

浴室も使用時のみ鍵を開けます。

ハサミ、ドライヤーなどはナースステーション管理などなどです。


精神科病棟には患者さんが持ち込みできる物品に、制限がありますが、生活とのバランスを考えるため、全てを禁止することは出来ません。


リスクの高い方の持ち込みはもう少し厳しくしますが、

本人が持ってなくても、周囲の患者さんのベッドサイドから完全に無くすことは出来ません。


患者さんによっては、病院の売店に行ける人もいます。

病院の売店も、精神科以外の病院内の構造も、危険物が山ほどあります。


服のポケットや下着などに隠して病棟に入ろうとする人もいるので、必要な人はそこまで確認します。


ここまでの配慮で、行動へのハードルは下がりますが、希死念慮や行動が切迫している人の行動を抑止するほどの制限にはなりません。

そういう方には隔離や拘束が指定医によって検討されます。


隔離の場合、

ベッドは部屋に入れられません。

ベッドマットのみになります。

テーブル等も使用するときのみです。


布団や枕も預かり、夜のみお渡しすることもあります。


基本的に、保護室と呼ばれる何もない部屋にトイレのみがある部屋に入っていただくことが多いですが、保護室も限りがあるため、個室で代用せざるをえないことがあります。


個室にはプライバシーを守るため、カーテンがかかっていますが、カーテンも預かることがあります。

カーテンレール自体は、マジックテープでカーテンをつけるタイプになっており、負荷がかかるとカーテンが落ちるようになっていました。

ですが、布だということには変わりがないのです。


それでも限られた資材で自分を傷つけようとする人もいます。

壁で頭を打ち付けたり。


そうなると身体拘束になることがあります。

身体拘束も、だからといって自殺リスクがゼロにはなりません。


拘束帯(体を固定しているもの)が首の位置になるように動いて、首を絞めようとする方もいるからです。


治療の過程で希死念慮が落ち着けば少しずつ制限は解除されていきますが、どうしても慎重になってしまいます。

気持ちは揺れ動くもので、落ち着いたように見えても、落ち着いたように見せている方もいますし、突発的に再燃することも多いからです。

不必要な制限と必要な制限の隙間はとても判断が難しいです。


余談ですが、患者さんが行動に移すのは、看護師がくる確率が低いとわかっている時間帯が多いです。

例えば、勤務交代の申し送りの時間帯や、夜勤で決まった時間に巡視をしている時の巡視直後などです。

申し送りをしていない看護師は特に注意を払う必要がありますし、リスクの高い患者さんが入院しているときには特に夜間の巡視を増やすこと、決まった間隔にはしないことが必要です。