体重や採血データが生命の危機を脱した場合には、必ずしも入院継続が必要ではありません。
そもそも、摂食障害の患者さんは
痩せへの固執や、自分が太っていると思い込むボディイメージの歪みなどの認知の歪みが是正されなければ治療終了とはならず、これには想像以上の時間がかかるため
(精神療法、認知行動療法やカウンセリングなどをうけながら少しずつ認知の歪み、その歪みとなる根本の原因などを探っていきながら修正していかれます)
入院だけでは到底完結しません。
ですので、入院の時点で、入院の目標があるはずなのです。
つまり、外来通院が治療にとって重要であることは言うまでもないのですが
摂食障害の患者さんには、自分が病気であるという認識が薄い場合が多く、個人に任せた外来通院は残念ながら続かない場合が多いです。
また、命の危機となるほど痩せ、動けなくなったら緊急搬送、緊急入院というケースを繰り返し、最悪の場合命を落とします。
周囲の適切なサポートが必要不可欠であることは間違いないのですが
周囲も歪んだ認識を病気に持っていることも多く、それがかえって本人にストレスをあたえ、過食嘔吐や拒食に拍車をかけることも珍しくはありません。
これも、実際の治療が家族の想像以上に時間がかかる事が伝わっていないことも大きな要因の一つだと感じます。
大事なのは医療者と密にコミュニケーションを取っていただくこと、治療の段階(現時点での目標はなんなのか)、確認していただくことが大切です。
あとは、摂食障害の治療につながるまで時間がかかればかかるほど、認知の歪みが強くなります。
できればおかしいかもと思った時点で、早めに受診を頂いたほうがいいと思います。
摂食障害の根底には色々な精神状態やストレス、環境が影響していることも多く、一括りにはできず、摂食障害の症状だけを治療すればいいというわけでもなく、難しい疾患の一つだと感じます。
また、最近ニュースにもなっていましたが、ヴィーガンなどの食に対する考え方が原因で極度の痩せ、命の危機に瀕した患者さんにも出会ったことがあります。
初めは健康のためにはじめたはずなのに、度を過ぎてしまうと命を落としかねません。
しかし、これも認知が歪んでしまっており、命の危機が、と説明しても拒否してきた食べ物を口にするにはとてつもなく時間がかかるのです。