第1回目は,加藤和彦氏。
トノバンは,歌の上手なシンガーではない。
これははっきりした事実です。
ですが,音楽表現の中で,自分の持っているダンディズムや色気を表現することを躊躇しなかったという点ではやはり先駆だったのかと思います。
たとえば,幸宏さんの「Saravah!」。
トノバンからの影響がとても強いことは1度聴けばわかります。
彼は,フレンチ,ラテン,ボサノヴァ・・・といった要素を,日本のポップミュージック,ロックに取り入れることに成功した第一人者だったと思います。
それは,細野さんのトロピカル~インド~マーティン・デニー(本当はこの書き方だと,時系列に誤解が生じるのですが・・・。ブログでは構造図が描けないもので・・・)という路線とはベクトルの違うものでした。
そういうトノバンの懐の・・・というか,引き出しの多さが,新人アイドルさん達のデビュー作を書く,などの仕事につながっていくのです。
そして,親しみやすいメロディを作るということの巧みさは,実は,彼がシンガーとして強烈な人ではなかったことが功を奏しているのかもしれないとも思われるのです。
このアルバム「あの頃,マリー・ローランサン」は,奇を衒うことなく音楽に向き合ったトノバンの姿が感じられる気がします。
ちなみに,曲中に聞こえるかわいらしいピアノは,矢野顕子のもの。
では,また。
