彼は前の会社の上司。
本部長兼取締役。
歓迎会以外では特に話す機会もなかった。
「偉い人」特有のかっこよさというか近寄りがたいオーラがある。
妄想で1度は抱かれたいタイプだなぁなんて思っていた(笑)←きもい
年齢的にも立場的にも、
というかそれ以前の問題であたしが相手にしてもらえるわけがなかった。
そんな彼Kさんと浮気をする夢を見た。
「うわ…あたし本部長の事そんなに好きなのかよ。。
てか我ながらきもいしありえないわ…」
しばらくしてあたしはこの会社をやめる事になる。
送別会にはKさんはこなかった。
決算期で忙しく、
最終日の挨拶も会議がようやくおわった時にさせてもらった。
あたしがやめた後、
会社の人と何人かでカラオケに行く事になった。
そこに、Kさんもいた。
「え、本部長もいるし!聞いてないし!!」
と思いながら笑顔で挨拶した。
「お疲れ様です!」
ん、久し振り。くらいの軽い返事だったけど、
あたしをしっかり見てる視線は感じた。
カラオケの途中、
酔ったあたしはKさんに浮気の夢のことを話した。
夢で見たのと同じ、白い車に乗ってる事がわかった。
車内の内装の色や左ハンドルである事も同じだった。
「なんで、俺の車知ってるの?」
みんなで飲みながら普通に唄って21時頃解散。
いよいよ酔ったあたしは超気が大きくなる。
みんなで会計をアレコレしながら、
思いっきりうまくふたりで飲みたいとKさんだけに伝えた。
Kさんは「みんないるからマズイだろ」とあせりながらも
これまた巧妙に「電話して」と名刺を渡した。
Kさんとあたしだけが渋谷で降りた。
事実のりかえなんだから何も不思議ではない。
二人だけになるとKさんは言った。
「じゃあ、ちょっと飲み行こうか。」
あたしの電話する手間は省けた。
40代の男性というのはどうして女に対してこんなにも巧妙なものだろうか?
連れて行かれたのは
今までで一番お洒落で高級そうで、かつ緊張せず落ち着ける和風バー。
あたしの好きなスコッチやら知らない強い酒がたくさんある。
それだけであたしのようなコムスメは舞い上がるからちょろい。
過去の仕事、恋愛、酒、霊感などについて、
聞かれるままにあたしはペラペラしゃべる。
というか、Kさんはじつにうまく聞き出した。
聞き上手なだけじゃなく、Kさんもしゃべるので
べつにこれが巧妙だとは思わなかった。…その時は。
ウイスキーをロックでいくつ飲んだかわからない。
語りつくして居心地が良すぎて、もう電車なんかない。
Kさんとあたしは、
これまた絶妙なタイミングで個室に移動していた。
ものすごく自然にKさんが言った。
K:「キスしよっか。」
あ:「どこに?」
あたしはまだ負けてない。
酔ってるけどこれくらいじゃ負けない。
本気で好きな人としかキスなんかしない。
あ:「うふふ(笑)なんで?あたしが対象になるの?」
K:「じゃなきゃこんなとこまで来ないよ。」
そういっておでこをくっつけながら二人で笑った。
…
「ホテルいく?!」
そういったのはあたしだった。