担当はある大学の経営学部を卒業していた。

ホストをやっていたのは、
経営を学ぶためだったという。


たしかに、経営者になりたいという話は何度か聞いていた。


ホストは
25歳までにやめると決めていたと話してくれた。




あたしはべつに悲しくなかった。
いきつけの八百屋が閉店すると聞かされたような気持ちだった(笑)




担当のラスイベは2月の雨の日に行われた。
とても寒い日だった。



当時の歌舞伎町は、風営法に違反した深夜営業が横行していた。

しかし、
一斉摘発が続いて現在の2部体制になりかけていた。



早朝。
新宿から黒いタクシーに乗り、担当に電話をかける。



「今タクシー乗ったよ。傘忘れちゃったぁ~。」
「わかった!んじゃ迎えに行くよ。
 運転手さんに風林会館までって言って。」



この雨なのに傘を忘れるわけがない。
あたしは持っていた傘をタクシーの奥にわざと置いて降りた。


風林会館前に待っていてくれた担当の傘に入り、
あたしは店に入った。



早い時間に来たつもりがすでに満卓だった。

あたしの通された卓は
あらかじめ用意されていたらしい最後の1卓だった。



エスコートしてくれたのはカイトくん。

まだ客はついていない新人ホストだけど、
素直で努力するすごくいい子。


あとで知ったんだけど、
カイトくんは有名な暴力団の組長の息子だったみたい。

たしかに尋常じゃないほどの刺青が入っていた。
ひぇー!


今頃どぅしてるだろう。
元気でいるかなぁ~?



この店の子たちはみんなできるホストばかりだった。


ホントに!
まずマナーがしっかりしているし、とにかく空気をよむ!
普通に話してて面白いから愛想笑いしなくていい!
よくこれだけ集まったなってくらいのいけめん揃い!
下手に煽ったりしない!
まさにイケメンパラダイス!(笑)

・・・もうあんな店ないんだろぅなぁ。



だから、担当が卓につかなくても全然苦痛じゃなかった。
むしろそのほうが面白かった。



その中で、一番のお気に入りのヘルプがヒカルだった。

とにかく顔がびっくりするくらい整ってる!
今までみた人間の中で2番くらいにかっこいい!
ちなみに1番は木村拓哉ね(笑)

あんな人はじめてみたよ。
しかもすごいノリがよくてうける!
もう言うことなし!



ホストって、顔がいいだけじゃだめだと思う。

たしかに顔がよければそれだけインパクトはあるけど、
ちゃんと空気よんでそれぞれ客にあわせた営業ができないと次に続かない。

いくら担当が好きでもヘルプがダメなら客は通わないからね。


だってまずそのギャップ。

すごいいけめんなのに面白い。
えっいけめんなのにそんなこと言うんだ!みたいな。



ホステスだって同じだよ。

芸能人並みの美貌と愛嬌で、のんびりおっとり営業。
なのに面白いこと言う!
酒強い!
好きな食べ物が枝豆とほっけとか女の子らしくない!みたいな(笑)


あたしが男だったら絶対惹かれちゃうよ!
「なんでこんな子がホステスなんてやってるんだろう?」って。



んで、ヒカルのギャップに完全にやられていたあたしは、
卓につくなりヒカルを場内指名した。


すると担当がやってきて、

「今日は来てくれてありがとう。」
とまっすぐに目を見て赤い薔薇を1輪渡してくれた。



男の人に花をもらったのは、このときがはじめてだった。




あたしどんだけホストじゃない男に縁がないのかしら(笑)




卓を見渡してみると、あたしと同じ薔薇をもらった客ばかり。

幹部ナンバーそれぞれのエースらしき客と、それ以外はほぼ担当の客で埋まっていた。



担当は全卓をまわらなければならないといって、
その日はほとんど卓につかなかった。


でもそんなの全っ然気になんなくて、
ヒカルとずっと飲めたことが楽しくてしかたなかった(笑)




時間をうまく見計らって、あたしはボトルをおろすことにした。


今日は担当のホスト最後の日。
シャネルの財布には20万あまりのお金を入れてきていた。



担当を少しだけ卓に戻し、
いつも通り予算を伝えてオーダーした。


それでもきっと細いんだけど、なんにもしないよりはね・・・



ヒカルは本当にいけめんで面白くて最高のヘルプでした!
他のヘルプについてくれた人もマジでみんな最高だったから、全然退屈しなかった。
放置(オンリー)もないしね。
さぁ、次回は「はじめてのシャンパンコール」をお送りします(笑)