薄暗い店内。
正面奥にウッド調の長いカウンター。


よく見ると、
店内のそこここに下着やブラジャーや水着がぶらさがっている。



始発を気にしていたエリカちゃんが言った。


『わぁ・・・何ここ。』



右のソファにトップレスの女性が横になっている。
それを黒いシャツの細い男が大きなカメラで撮りまくっていた。



カウンターに立っていた女性に案内されて、
あたしたちは奥のソファに座った。


みんなかなり飲んでいたので、
カシス系の軽いものをオーダーした。



全員、しばし隣の不思議な光景に目を奪われた。
堪えきれずレナさんが口火を切った。



『ねぇ、あの人男?女だよね?超綺麗・・・
 ていうか、飯島愛??』



白い素肌、まっすぐに伸びた脚。腕。
ものすごくスタイルがいい。
顔はたしかに飯島愛に似ていた。



ドリンクが運ばれてきて、
あたしたちは飲みなおしてきゃっきゃっとはしゃいでいた。



すると、隣から声がした。



『オカマがいるっ!オカマの声がするっ!』



白くて長い腕をにょっきりと伸ばして伸びをし、
長い栗色の髪をかきあげてトップレスの女性が起きだした。



『この中にオカマがいるでしょっ?!あんたっ?あんたっ?』



あたしたちの卓までやってきて、ひとりひとりの声を確認した。
するとエリカちゃんの声をきくと、



『いたぁーっ!あんたオカマでしょ!隠したって声でわかるんだからねっ!』


『ちーがーうー!あたしはハスキーなの!オカマじゃないもん!』



半ば本気で抵抗しているエリカちゃんの隣で、
レナさんとあたしはお腹を抱えて笑い転げた。



『ねえ、ていうか飯島愛?飯島愛じゃないよね?』


レナさんがいうと、
それまで饒舌にしゃべりまくっていた彼女は急に照れだした。


『え~そんなぁ~愛ちゃんになんて似てないよぉ~。』


多分飯島愛にあこがれてるんだろうなぁと思った。



彼女は葵さんといった。

どこで何をしている人かはわからないが、
性別ははるな愛や椿姫彩菜らと同じだという。


手術済みだというその身体は、
同じ女性からみてもうっとりするほど綺麗だった。



それからはガールズトークがはじまった。
女が4人も集まれば会話に困ることなんてない。
さっきよりもきゃっきゃっと騒いだ。



『あんた細い!あたしどうしたって太ももはだめなのよ~』

『ファンデ何使ってるんですかあ?』

『てか胸さわっていいですか~?』

『きゃあ!ちょっとあんたも触らせなさいよ!』

『きゃ~~~~~!!』



そうこうしているうちに閉店時間になり、
会計を済ませた山田さんがはじめて不満を口にした。



『なんでおまえらの会計までしなきゃなんないんだよ・・・ったく。』

『あはは~いいのいいの!ゴメンね山ピー。気にしないでねー!』



よくわからないフォローだが、
レナさんの一言が山田さんをちょっと笑顔にさせた。



地上に出ると、外はすっかり明るくなっていた。
朝日がまぶしい。


真夜中の歌舞伎町が大好きだけど、
明け方の明るい歌舞伎町も悪くない。



『はいはーい!あたしあのタクシー乗りまーす!
 あっ、じゃあねー!!』



交通量の増えた、車であふれている路上で
彼女は無理矢理タクシーをつかまえていった。