偉そうな口をきいたものの、母のことはずっと心配だった。


急に容態が悪くなって、
父から母の悲報を受けるのではないかといつも思っていた。


父親は普通のサラリーマンだが、標準より少しだけ多くお金を稼いでいた。


しかし、世界的な景気の悪化で、父の働く業界も打撃をうけているとニュースで報じられた。



残業やボーナスはカットされ、派遣は解雇されたと父から聞いた。



うちに、新しいマンションや車のローンがあることは知っていた。



抗がん剤の薬は、2、3時間の点滴で母の体内に入れられる。


たったそれだけで10万円くらいする。



誰にそうしろと言われた訳じゃない。


あたしはテレアポのバイトをはじめた。


休みの日や早番の日はバイトに行った。



母親が病気なのに、実家に帰らないことに負い目があった。



学生時代、あたしは親の稼いだお金を湯水のように使っていた。



それまでして貰ったんだから、
今度はあたしが仕送りをする番だと思った。



休みがなくてもはじめはよかった。



月に1度は、バイトで稼いだ給料をもって母の顔を見に帰った。



それが2ヶ月くらい経ったとき、
だんだんつらくなってきた。