サイケの響く薄暗い店内。

そこここでたちこめる煙草の煙。

男たちが一斉に声をあげる。




『お客様ご来店です!』
『いらっしゃいゃせぇー!!』



久々の感覚にドキドキしてしまう。



新しい店に来たのもはじめてだし、どんな子がいるのか楽しみだった。



Kはすぐにあたしの卓についた。


新規だったせいか、いろんな人がつく。



やる気のなさがにじみ出ている大河。


年下で可愛らしいカイくん。


大人の男らしさがかっこいいケンちゃん。

最強の美顔をもつ翔。



みんなルックスがよくてトークもうまい。



中でも一番気に入ったのは翔だった。


今まで見た人の中で一番かっこいい顔。



あたしと同じ歳なのに、水歴が長いせいかちゃんと空気もよめて楽しませてくれた。


彼が幹部だったことは後で知った。



この日、あたし以外の客は1組。


奥の卓に、ロングヘアの、Kよりも背の高いおねえさんがいた。


煙草をふかし、騒ぎもせず派手に飲むわけでもなく静かに飲んでいた。



あたしはおねえさんより先に送られたのが気に入らなかった。




あたしは少しだけKとの時間を買った。


残るものは何もない。


Kと話したかったこともないし、したいこともない。



思い出は過去となって、
そのうち消えてなくなる。


意味のない関係。



泣くのは自分だとはじめからわかっていたゲーム。



それでも、Kが好きだった。