飲み始めてすぐに常連客らしき男が入ってきた。

すると隣で得意げにあれこれ喋りだした。



よく喋るなと思いながら適当に相槌をうっていると、
気分をよくしたのかあたしのグラスの焼酎がどんどん濃くなっていく。



男の社会的地位は低くないかもしれないが、
内容はじつにくだらないことばかりだ。



知らない人はいないくらい有名な人と仕事をしたとか
俺は某有名歌手のプロデュースの責任者なんだとか



訊いてもいない
「俺はこんだけすごい仕事をした」自慢。



二十歳そこそこのコムスメにこんな話をする男には、
ありきたりな感嘆詞と適当に一言つけるだけで充分だ。



どうして最後には必ずやるやらないの話になるんだろう。



男の誘いに考えるまでもなく断ると、


「どうして?やりたくない理由をわかるように説明してよ。」


そう言った男の顔に笑いはなかった。



理由なんて無い。

いくら酒を貰おうが札束を積まれようがそんな間違いはしない。


それだけあたしがなめられてるということか。




酔いがまわりキマりかけた時、
店を閉めてその店のママと3人で移動することになった。


別に頼んでもいないのに、
その途中で男があたしの元客に連絡して合流した。