意外と暗いホテル街を突っ切って次の店に向かう。


さっきから背後に人の気配がする。
間違いなくつけられてる。


「あのぅ、ちょっとでもいいんで遊べませんか…?」


シンプルな眼鏡をかけたリーマン風の男だった。
きっとこの人の「遊び」はイコール援助。


「ほんとにちょっとだけでいいんで」

「お願いしますっ」


こんなに控えめで腰が低くて見込みはあるのか?
疑問に思いながらスルーして店に入った。



迎え酒など関係なくさっきよりピッチをあげて飲んでいると、
同じ名前の友達から電話がかかってきた。


「今から速攻いくから!!」


本来なら禁止の中抜けをして、
電話を切ると同時に彼女の家に向かった。


店から10分もかからない彼女の家前までタクシーを乗りつけ、
急いで連絡をして部屋に入る。


白を基調とした部屋で、カーテンなど随所にベビーピンクが施されている。

きらきらした大きな鏡。
テーブル。
ドレッサー。
天井を見るとシャンデリア。

奥の出窓の下には大きな天蓋つきのベッドがあり、
細いガラスの花瓶に真っ赤な薔薇がささっていた。



血相を変えて
という言葉がぴったりの蒼白い顔をして、

左手に黒い携帯を握りしめた彼女がお姫様の部屋の真ん中で佇んでいた。