去年のお話です。
あたしの唯一の妹が逝って、もうすぐ1年。
享年12歳。人間で言うと80くらい?
寧々ちゃんはゴールデンの♀。
あたしが7歳くらいのときにうちに来たのをなんとなく憶えてる。
顔が超可愛くて、頭がよくて、お手もおすわりも待てもすぐできた。
伏せは苦手だったけどね。
性格もよくて、人を噛むなんて絶対しなかった。
あの子が怒ったところなんて見たことない。
他の犬に自分のごはんを食べられても、うちのネコにパンチされても、
絶対怒らなかった。
まつげまでゴールドの毛並みがとっても綺麗だった。
ごめんね、親馬鹿です。
去年の6月
久し振りに帰省して、あたしが寧々ちゃんのお散歩に連れてった。
すっごい嬉しそうにしててぴょんっぴょんしてた。
でもそのとき、異変を感じた。
異変をお父様に話したけど、軽く流された。
そして2ヵ月後
寧々ちゃんを病院に連れてったというお父様から、彼女はもう長くないと聞かされる。
顎部から食道にかけて腫瘍があり、もう手の施しようがないと言われたらしい。
末期だった。
このまま死を待つか、大学病院で顎を切断して延命させるかどっちかしかなかった。
ちなみに後者の場合、顎を切断するため水さえ喉を通せないことは言うまでもない。
そんな辛い思いまでさせて、生きなくてもね…
これが暗黙の家族会議により達した結論だった。
9月
例の如く2週間北京で遊んで帰ってきたあたしは、そのまま実家に帰った。
2日くらい経って、その日はやってきた。
「もう危ないと思う。」
お父様はそう言って、いつものおうちじゃなくて窓からすぐ見えるところに彼女をつないだ。
久し振りに見た彼女は、もう歩くどころか立つことさえままならなくなっていた。
患部の顎は考えられないくらいに腫れて、可愛いお顔なのにそれがまた哀しかった。
あんなに綺麗だったゴールドの毛並みはどこにいっちゃったの?
9月に入ってまだ夏休みなんてあたしくらいしかいない。
普通の平日で2人は仕事だし、家にいるのはあたしとネコ2匹だけだった。
あたしは帰国直後のせいか身体がおかしかったので、朝からずっとソファに横になっていた。
ほとんど動かなかったのに、急にカラダが動いて、寧々ちゃんが何か言った。
その瞬間、急に鼓動が早くなった。(あたしのね)
えっ何?寧々ちゃん今なんていったの?
次の瞬間にはもう彼女は呼吸をしていなかった。
すぐ外に出て何度も名前を呼んだけど、もう二度と動かなかった。
だんだん死の現実がわかってきて、気がつくと泣きながら
「ごめんなさい、寧々ちゃんごめんね。ごめんなさい。」
と繰り返していた。
怖くてあんまり見られなかったけど、彼女の腹部には小さい虫が無数に蠢いていた。
綺麗にしてあげられなくてごめんなさい。
死んじゃうなんて思わなかったから。
動かなくなった瞳を閉じてあげて、頭を撫で続けた。
ひととおり泣き止んでから、お父様の会社に電話。
最初は会社の人が出るからちゃんと話さなきゃって思ったけど、まだ声が震えた。
「もしもし、○○でございます。いつもお世話になっております。以下略」
そのあと女王の病院にも電話。
2人とも速攻で帰ってきてくれた。
**********************************
本当は痛かったはずなのに、痛いって鳴かなかったね。
食道が侵食されて、だんだん声が変わってったね。
それでもお父様が帰ってくると鳴いて教えてくれてありがとう。
もううちではあなた以外のイヌは飼わないことに決めました。
一緒に林檎食べたこと、忘れないよ。
一緒にキャンプ行ったの、楽しかったね☆
今年は初めてのお盆だけど、帰ってきてくれるのかな?
ありがとう。
さよなら。