「mRNAワクチン」「ウイルスベクターワクチン」

【従来行っていたワクチン】
①生ワクチン
MRワクチン、水痘ワクチン、BCGワクチン、おたふくかぜワクチン等

病原性を弱めた病原体からできていて、接種すると、その病気に自然にかかった場合とほぼ同じ免疫力がつくことが期待できる。
一方で、副反応として、軽度で済むことが多いですが、その病気にかかったような症状が出ることがあります。

②不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン
日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチンなど

感染力をなくした病原体や、病原体を構成するタンパク質からできていて、1回接種しただけでは必要な免疫を維持できないため、一般に複数回の接種が必要。

【仕組み】
従来のワクチンは、ウイルスの一部のタンパク質を人体に投与し、それに対して免疫が出来る仕組み

※厚生労働省HP、新型コロナワクチンについてを引用

【mRNAワクチン】
脂質ナノ粒子などのキャリア分子に抗原タンパク質をコードするmRNAを封入した注射剤。
注射されたmRNAが局所の宿主細胞内に取り込まれ, 翻訳されることにより、抗原タンパク質が産生され、抗原特異的免疫応答が起こる。

・メリット
感染性がない点、細胞成分等の混入がない点、細胞性免疫の惹起、 アジュバントが必要ないこと、生産が安価で比較的簡便であることなど

・デメリット
RNAやキャリア分子の不安定性, 強い副反応, そして生体内での翻訳・発現効率などのハードル

・歴史
1990年ルシフェラーゼをコードしたmRNAワクチンをマウスに筋肉注射した際に活性を認められることが発見
2012年にインフルエンザに対してmRNAワクチンの概念実証がマウスモデルで示された
2017年にはヒトにおける初めての感染症予防mRNAワクチン(狂犬病ワクチン)の臨床試験第1相の結果が報告

狂犬病の他にもHIV、HPV、ジカ熱、チクングニア熱などに対する感染症予防mRNAワクチンの臨床試験が開始されていたが、いずれも実用化までには至っていない

【ウイルスベクターワクチン】
ヒトに対して無毒性または弱毒性のウイルスベクターに目的の抗原タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ組換えウイルスを使用しており、ヒト体内で複製可能なものと不可能なものがある。

・メリット
※1抗原タンパク質発現の安定性、※2細胞傷害性T細胞応答誘導、※3アジュバントが必要ないことなど

※1従来のワクチンでは不活化したウイルスやウイルスの抗原タンパク質を外部から体内に、「mRNAワクチン」「ウイルスベクターワクチン」は人間の細胞に作らせるので抗原タンパク質が安定
※2リンパ球T細胞のうちの一種で、宿主にとって異物になる細胞を認識して破壊する細胞を人間の細胞に作らせる
※3薬物による効果を高めたり補助したりする目的で併用される物質・成分

・デメリット
ヒトゲノムへのウイルスゲノム挿入変異による発がん、ウイルスベクターに対する既存免疫によるワクチン不全、ウイルスベクターそのものによる病原性、低力価、などのハードル

・歴史
1990年代初頭欠損遺伝子を導入する遺伝子治療のツールとして開発
1999年アデノウイルスベクターを使用した遺伝子導入治療の治験に参加していた男性が接種4日後に死亡する
2002年遺伝子導入された細胞由来の白血病を発症した事例が報告
2019年エボラウイルス病に対して欧米が承認

【仕組み】
2つのワクチンは、人口のウイルスのタンパク質をつくるもとになる情報の一部を注射し、この情報をもとに抗体ができる

【RNAワクチンとウイルスベクターワクチンの見解】
重症化リスクや感染リスクの高い者への接種による利益は、副反応という不利益を大きく上回ると考えられる。
一方で、稀有な副反応や長期的(3カ月以降)なワクチンの安全性については未解明の部分が多く残されている。
これらについては、今後、データが蓄積されていく欧米や、国内導入された後の市販後調査の中で徐々に明らかになっていくことが期待される。
既存ワクチンでは想定しなかったような事態も発生する可能性があるということを、ワクチン接種にかかわるすべての者が認識しておくべきである。
このような状況の中で医療や公衆衛生に従事する者に求められるのは、これらのワクチンがどのような性質を持ったワクチンで、どの程度有効で、どのような副反応がどのような頻度で起こるのか等、既にある情報を正確に理解し、被接種者に丁寧に伝えていく「リスクコミュニケーション」をそれぞれの立場で適切に実践していくことである。

※NIID国立感染症研究所HPmRNAワクチンとウイルスベクターワクチンの基本を引用(原文まま)

現状もデータの収集中であることは明らかで、その安全性・危険性を断言できるのはこれからです。
何にも傾倒しない真実の情報が共有出来る世界を望みます。