27 sezioni ( 27節 )
その言葉の方向に、呼ばれた張本人以外が首ごと動かして振り向く。
スラリと整った白く長い足、制服の上からでも現れている引き締まったウェスト、歳不相応に発育した胸、髪型のせいかとても子顔に見えるがそれが逆に大人びていて、同年代とは思えない。
一人を除き、私たち3人は彼女を知っている。
ここ、海南高等学校の・・
『ここの生徒会長の、上島美緒と言います。』
この高校の生徒会は、一般社会の公共団体でいう、『政府』に値する。
他の高校では『校長』が絶対的権力、全てを取り仕切るが此処では『生徒会』が
校則の見直し、それの違反者の取り締まりは当然の如く、行事の収支決算に予算組み立て、教員の不正行為の指導・・一言で片付けてしまえば『査問委員会』みたいなものなのだ。
そしてその生徒会の業務全てを取り仕切り指示をするのが『生徒会長』。校長でさえも無闇に口出しすることはできない。この存在に対抗できるのは、教育委員会ぐらいだろう。
彼女がその気になれば、生徒の一人や二人を退学にすることなど容易い。
勿論、学校を手中に収める事が出来るポジションを陰険に手にしようとする者も、当然現れてくる。
1年に1度開かれる『生徒会選挙』の前日には、当時の生徒会長を秘密裏に呼び出しアタッシュケース一杯にお金を詰め『買収』を図ったものがいたぐらいだ。無論、その生徒は1週間後に退学、理由は様々な説が流れており定かではない。だが、それが生徒会の力ではないかと考えることが妥当だろう。
・・とは言え、原則的な当校の校則までは変えることは出来ない。他校で染毛やアクセサリー装備など必ず違反対象であるものを、容認している。校長曰く、『やることさえやってくれればそれでいい。』とのこと。
音哉:・・何の用だ?
初めて私たちにした同じ態度と口調で返事をする。
美緒:それが生徒会長に対する態度なの?
転向してきたばかりの彼が知らなくて当然だ。それに、今年の生徒会長は私のクラスの『あの娘』よりも傲慢で高圧的態度をとり、平気で無理な命令を教職員や生徒達に押し付けその上自分自身では何も行動しない。そのため、陰口をよく聞く。
音哉君は何も言わず、視線も合わさず鞄から新しいコロッケパンを取り出しカプリと齧る。・・そのモグモグと噛んでいる姿が可愛い小動物に見えたのは秘密っ。
全ては我を中心に動いているのよ!が生き方の裸の王子様ならぬ、『裸の女王様』は唯でも沸点が低いのに、このような態度をされるものなら簡単に顔を赤くする。そりゃあもう可愛い方の赤面ではない。
美緒:生徒会長のワタクシが話かけてやっているのです!目と体をこちらに向けなさい!!
音哉:・・用が無いなら話かけるな。目障りだ。
美緒:め・ざ・わ・り・ですってぇ~!?言っておきますが!ワタクシがその気になれば、貴方など簡単に退学処分にできるのですよ!?
音哉:おい、ルナ。ここの生徒会長は、面白い人間だな?
急に話を振られ、視線を彼に移す。『面白い』といいつつも彼の視線は笑っていない。・・冷酷で、見下している目。
私は返答に詰まり、苦笑をすることしかできなかった。
彼はフンと鼻で笑うと食べ終えたコロッケパンの袋を鞄に終い、スタスタと出口に向かって歩き出した。
美緒:ちょ、ちょっと!まだ話が終わっていませんわ!!
ドアノブをまわし、扉を開けた所で彼は振り返り、
音哉:屑と関わる趣味はない。
ガタン、と鉄の重い音が響いた。女王様はと言うと・・
美緒:キィ~!何なのですのあの態度は!絶っっっっっっっっっ対に許しませんわ!!
ドシンドシンと音がしそうな歩き方で扉へ向かう会長は、ふと途中で止まり、私達をギロリッ!と鬼のような形相で睨むと、
美緒:貴方達も、彼のご友人なのでしょう?・・只では済ましませんわ!覚えておきなさい!!
町中に響くのではないかと思う程の怒号で言い放った。
残ったのは、私達三人と、青空と、風。
そして、不安。
この不安は、何なのだろう。
彼の不幸と道に対する不安ではない事は確かだった。