旅館に戻ると忙しなくご飯を勧められた。
「電気無いから明るいうちに食べて」
翌朝には復旧しているだろうと思いその日は寝た。
そんな淡い希望は、翌朝にはものの見事に裏切られる。
まだ停電。
「まじか…。」
こんな経験はしたことが無い。因みにこの間夜中もずっと外では非常放送がずっと流れ続けている。
現場事務所に行っても仕方が無い。でも、来いと言われているので行くしかない。
案の定中止。
もしものためにということで、すべての車両の燃料を満タンにする。
ここで、うちの会社6人にどデカイ難題が突きつけられる。
仙台に、帰るか。東通に、残るか。
この段階では、道路状況の情報はなかった。
高速道路は地震だから止まっていることは確実だし、震度7が観測されているのが栗原地方ということだけで判断するしかなかった。
家族に相談するか。いつかかかるか分からない電話をかけたところ、嫁さん、母親がまったく同じことを言ってきた。
「帰ってくるな」
仕事も中途半端でしょ、こっちは何とかなっているから、大丈夫だからということだった。
そして、道路状況が分からない状況で全員戻るのは危険すぎる。
戻っている最中に余震がおき、全滅ということも考えられる。
苦渋の決断を下した。下すしかなかった。
家族と連絡が取れている3人は残る。取れていない3人は帰る。
そして自分は残る3人の中に入ったいた。
仕方が無い。帰りたい気持ちをぐっと抑え、仙台に戻る車を見送った。