同居猫・小雨が綴る
キョーコさんとの
ふたり暮らし
キョーコさんと小雨は、海辺の街にいます。海を見て、すぐに
帰ると思っていたけど、どうやら、あのお庭の家にはもう
帰らないみたい。あれは、お引っ越しだったんだなぁ。
お引っ越しって、大きなトラックが来て、たくさんの
ダンボールや家具を運んだりして、もっと大げさなものだと思って
いました。
でも、うちのキョーコさんったら、愛車に小雨と身の回りの
ものだけ積んで、ドライブ気分だったから、引っ越しだとは
気が付きませんでした。
この部屋の嬉しい思い出も、悲しい思い出も、全部、置いて
ZEROから始めたほうが、気持ちがいいんだそうです。
キョーコさんの、お引っ越しは、いつもそんな感じみたい。
やっぱり、このひと、
ちょっと変わってるな、と小雨は思います。
あの庭も、白いネコさんたちも、蝶々さんやトカゲさんや
小鳥さん、小雨は全部持って来たかったのに...。
でもね、引っ越してみて気が付きました。
庭の代わりに海がある。
大きなトンビさんを初めて見ました。
散歩中のワンワンが
砂浜にたくさんいる。
キラキラ光る夜景もある。
ZEROになるとまた、ICHIから、いろいろなものが
やってくるんだね。それは、とっても
楽しいことなんだね。
結局、小雨は、キョーコさんが
いれば何があろうと、
どこで暮らそうと、
幸せなんだと思いました...。
備考:この内容は、
2022-5-7
発行:KADOKAWA
グループパブリッシング
著者:小泉今日子
「小雨日記」
より紹介しました。