こんにちは!ひよっこ救急医です🐣


みなさん、救急関連の論文は定期的にcheckしていますか?私はいくつかの雑誌を、数日に1回更新されていないか追い続けています。勿論、全部読む時間はないので、タイトルから気になった論文と、review articleを中心に読んでいます。

 

今回は私が読んでいる雑誌を中心に、皆さんにおすすめの雑誌や各雑誌に対するイメージをご紹介します!


(個人的な好みでおすすめ度を星3段階で表しています)

 

  Annals of Emergency Medicine 

おすすめ度:⭐⭐⭐

https://www.annemergmed.com/


ACEP(米国救急医学会)が監修する雑誌。救急関連の雑誌の中では、Resuscitationと並んでトップクラスのインパクトファクターを誇る。ACEPからの臨床指針もよく載るので必見。重症管理だけでなく、小児・産婦やマイナーエマージェンシーなど、ER診療全般で勉強になる論文が多い。

 

  Resuscitation  

おすすめ度:⭐⭐

https://www.resuscitationjournal.com/


前述のように救急領域ではトップクラスのインパクトファクターを誇る。名前の通り、ECPR等の心肺蘇生に関する論文などに少し偏っているイメージ。

 

  The American Journal of Emergency Medicine 

おすすめ度:⭐⭐⭐

https://www.sciencedirect.com/journal/the-american-journal-of-emergency-medicine


Annals of Emergency Medicineと似た雰囲気を感じる。ER診療一般について、偏りなく論文をあつかっており、ER医としてはとても勉強になる。

 

  The Journal of Emergency Medicine 

おすすめ度:⭐

https://www.jem-journal.com/


AAEM(American Academy of Emergency Medicine)関連の雑誌。神経ブロックやマイナーな箇所のPOCUSなど、少しニッチなところまで書いてある印象。ER医向け。

 

  Internal of Emergency Medicine 

おすすめ度:⭐


イタリア内科学会の雑誌。一般内科のことも多く書いてあるが、意外とマイナーエマージェンシーのreviewもある。論文内に画像が多めで分かりやすい。

 

  Emergency Medicine Clinics of North America 

おすすめ度:⭐⭐

https://www.sciencedirect.com/journal/emergency-medicine-clinics-of-north-america


年間4回ほど、「Hematologic and Oncologic Emergencies」「Geriatric Emergency Medicine」などと、カテゴリーを決めてReview articleを一気に出してくる。各分野について、深すぎずにまとまっている。Reviewなので最新の知見というよりは、基礎的なことを固めていくのに有用。抄読会にもおすすめ。
 

  Critical Care Medicine 

おすすめ度:⭐⭐

https://journals.lww.com/ccmjournal/pages/default.aspx


SCCM(米国集中治療学会)のJournal。必見。


  Intensive Care Medicine 

おすすめ度:⭐⭐


欧州集中治療医学会のJournal。上記Critical Care Medineとともにcheckしている。Visual Abstract的なのが目につきやすい。

 

  Chest Critical Care 

おすすめ度:⭐⭐⭐

https://www.chestcc.org/


更新頻度は少な目だが、初療~集中治療のことまで扱っている。秀逸なreviewも多く、すごく参考にしている雑誌の一つ。
Chestの関連雑誌なので、呼吸器疾患や循環管理、術後管理などが特に面白い。


  Critical Care 

おすすめ度:⭐


Critical Care Medicineと名前がややこしい(笑)
Visual abstractがかっこいい。ひよっこ救急医のcheck頻度は他の雑誌より少し落ちる。

 

  Burns and Trauma 

おすすめ度:⭐

https://academic.oup.com/burnstrauma


かなり有名な雑誌。名前の通り、熱傷や創傷処置に関する論文が多い。
論文の内容は少しニッチな印象がある。

 

  Circulation 

おすすめ度:⭐⭐

https://www.ahajournals.org/journal/circ


AHAの誇る循環器雑誌。ACLSなどもそうですが、循環器と救急は切っても切れないのでcheckしている。脳卒中や高血圧などについてのガイドラインや論文もここに載るので、優先度高めに読んでいる。更新頻度も多い。

 

  NEJM 

おすすめ度:⭐⭐

https://www.nejm.org/browse/nejm-article-category/review?date=past5Years

 

誰もが知る雑誌。救急関連に過ぎず、さすがにここに出る論文はある程度把握しておいたが方がよさそう。

 

  JAMA 


いわずもがな、こちらも誰もが知っている。Review articleが非常にまとまっている。ガイドラインとしてここに載ることも多い。ひよっこ救急医はJAMAのreviewは半分以上読んでいます。

 

  BMJ/State of the art review 

おすすめ度:⭐


4大誌の1つ。BMJには救急医学として集まったカテゴリーがない。各分野の最近の治療についてまとめられたreviewが載るので、基礎的というより、新しいことに関するreviewを知ることができる。更新頻度が少なく、救急に全く関係ないことも載っている。

 

  まとめ

どうでしたか?皆さんもcheckしている雑誌はあったでしょうか?🤔


もし、これから救急の論文をこれから読んでみたいけど、何から読んでよいか分からないという、若手がいたら参考になると嬉しいです!また、皆さんのおすすめの雑誌も教えてくださいね✏️


 

 

ご無沙汰しております。ひよっこ救急医です!

少し忙しくしていたので、投稿がなかなかできずにいました。

 

さて今回は処置時の鎮痛・鎮静について扱います。

研修医や専攻医なり立ての先生はまだ慣れていない方も多いかもしれません。

 

救急医の目線から初学者向けに、薬剤選択についてをまとめてみました!

 

  今回の文献

  • 処置時の鎮静・鎮痛ガイド. 医学書院.2016.
  • Anesthesiology. 2002;96:1004–17
  • Annals of Emergency Medicine.2019,73(5),e51-65
  • Annals of Emergency Medicine. 2003, 42(5).627-635

 

  PSAとは?

処置時の鎮静・鎮痛は用語としてPSA(procedural sedation and analgesia)と表現される。
薬剤選択や鎮静を行うにあたって、PSAが全身麻酔とは違うということをしっかり認識しておくこと。

すごく簡単に言うと
全身麻酔:気管挿管などの高度な全身管理が必要になる
PSA:上記にならないように注意して行うもの

 

Anesthesiology. 2002;96:1004–17を参考に作成

 

上記の表のように全身麻酔にしてしまうと、大がかりな全身管理が必要となることがあります。これをERにくる高齢者や全身状態が不安定な人、あるいは物品が不十分なまま行ってしまうと重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。


「完全に寝かす」のではなく、処置を行うために必要な鎮静度はどのあたりなのか目標を立てて薬剤投与する必要があります。

 

※薬剤を使わない方法や局所麻酔や環境調整、日時をずらすなど他の方法で逃げれないかを検討する必要もあります。

 

  薬剤選択

ケタミン

解離性麻薬(鎮静は得られるが、気道・自発呼吸・循環動態は保持される)のが特徴。

 

長所 

  • 呼吸や反射が保たれる。血圧・脈拍が軽度上昇することもある。→ショックや気道・呼吸を保持したいときに使いやすい

短所

  • 完全な無動を得られず、自発的な体動を認めることがある。開眼。
  • 精神的興奮、悪夢 →事前説明が重要。
  • 喉頭痙攣
  • 嘔吐、流涎→上気道トラブルに注意
  • 脳圧亢進作用→頭部外傷では使いにくいかも

 

項目的には短所の方が沢山載せてしまいましたが、気道・循環が維持されやすい薬剤として有名で、私は最もPSAに使用する薬剤の一つです。

 

ミダゾラム

長所

  • プロポフォールに比較すると血圧低下、呼吸抑制はマシ(だけどある)
  • 健忘作用
  • 持続時間が長い→MRIで良いかも

短所

  • 持続時間が長い→帰宅できなくなるかも
  • 脱抑制(鎮静をかけることで寧ろ不穏になること)
  • 耐性→BZ内服やアルコール依存患者では注意が必要

 

プロポフォール

長所

  • とにかく切れ味が良い→早く効いて、すぐ覚める
  • 無動化あり

短所

  • 血圧低下作用が強い(ショックでは禁忌に近い)
  • 上気道閉塞のリスクも高い
  • 大豆アレルギー、妊婦では禁忌

  ケタミン+プロポフォール=ケトフォール

ケタミンとプロポフォールを同時投与すると、それぞれの短所を打ち消しあい、比較的深めの鎮静を安全に行いやすい。

基本的にはケタミンとプロポフォールを1:1で使用し、ケタミンを先行投与する

例)ケタミン0.5mg/kg bolus→プロポフォール0.5mg/kg bolus

 

一部で使用されているラボナ―ルやソセゴンについてはあえて記載していません。

理由については今後またどこかで紹介したいと思います。

 

 

  今回のまとめ

さて、今回はPSAに使用する一般的な薬剤について紹介しました。

前述のようにどういった鎮静レベルを目標にするかによって鎮静度や薬剤選択は変わってきます。


例えば、、

MRI検査では、長く無動化が必要です。 ケタミンだと無動化得られなかったり、プロポは途中で切れる可能性についても考えた方が良いかもしれません。あるいは、あるいは腰椎穿刺や口腔内縫合など、無動化を要するものでは無動化が重要になりますね。

脱臼整復等で処置後に帰宅することを目標にしている場合は、ミダゾラムだと覚醒まで時間がかかるかもしれません。

 

必ずしも正解や間違いはないと思いますが、その時々の状況に合わせて上記のような薬剤を選んでいく必要があります!

 

 

 

お久しぶりです!


ER診療において、緊急性という意味合いでは末梢型DVTはすぐに治療適応にならないので、ERにおいて急いで見つけなければいけない疾患ではないことが多いですよね。

 

しかし、末梢型DVTに対して、抗凝固療法はいらないのでしょうか??


あまり治療対象にならないというイメージもあるかもですが、本当にそうなのか?

どうマネジメントすべきか?

 

ガイドラインを元にまとめてみました!

 

  今回の文献

2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン

 

  末梢型DVTとは

そもそも末梢型とは…?

中枢型(近位型):膝窩静脈を含み、中枢測

末梢型(遠位型)膝窩静脈より遠位

 

  末梢型DVTに対する抗凝固療法

末梢型DVTは2週間以内に血栓の中枢伸展がなければその後の伸展はないとされる。

routineの抗凝固は避ける。また、抗凝固療法をするとしても3か月以内とする。

 

マネジメントとしては大きく下記の通り。


①抗凝固せずに7~14日後にエコーで中枢伸展の有無を確認する

再発高リスク症例のみに抗凝固療法を施行する


具体的には有症状、VTEの既往、大きな新鮮血栓、下肢の整形外科周術期、がん周術期、化学療法中などでは、抗凝固が有用な可能性がある。

 

したがって、ER医のマネジメントとしては、あまりリスクがない人は帰宅後に専門医でフォローしてもらう。かなりリスクの高い人はそのタイミングで抗凝固を開始するか専門医にコンサルテーションする。というところが落としどころでしょうか!

 

  まとめ

  • 末梢型DVTではroutineの抗凝固は避けるものの、中枢伸展がないか1~2週間後に経過フォローが必要
  • 高リスク症例では抗凝固療法を開始する場合もある。

 

末梢静脈路からノルアドレナリン、よく使いますよね。ただ、末梢から投与すると気になるのは、合併症。


血管外漏出、血栓性静脈炎、組織壊死、四肢虚血などなど

(Farm Hosp. 2025 Jan-Feb;49(1):T46-T52.)

 

高用量になるとCVをいつ入れるか?という議論が生まれます。

 

さて、今回は末梢でどれくらいノルアドレナリンを使ってよいか。

調べたものを共有します!

 

  投与時間

NAD末梢投与の組織障害発症は平均55.9時間。
ほとんどは投与開始6時間後以降に発生する。
J Crit Care.2015;30(3):653.e9-17.

 

したがって、例えば深夜帯にCV留置に慣れていない先生が対応する場合に、朝まで末梢で粘って、慣れている先生にお願いするというのも状況によってはありかもしれませんね。

 

  用量

0.01~0.1γが推奨(オランダ、外科手術)
Anesth Analg. 2020;131(4):1060-1065,

0.02~0.13γなら合併症なし
Enfermería Intensiva (English ed.) 2023;34(4):218-226

 

上記のように報告されており、概ね0.1γ強がボーダーラインになりそうです。

例えば、5A組成(NAD5ml+NS45ml)、体重50kgとすると、5ml/hrを超えてくるとCVを考慮してもよいかもしれませんね。

 

  その他

肘窩に20Gまたは18Gであることで合併症が減少するとの報告あり。
Ann Pharmacother.2022;56 (7):773-781,

 

  まとめ

  • 末梢NADの組織障害は、ほとんどの場合投与時間が6時間が超える場合に生じる。
  • NAD0.1γを超えたらCVを考える。

 

肺塞栓症、虫垂炎、腎盂腎炎、、

妊婦に造影CTが必要。でも、よく知らないと被ばくや造影剤使用って抵抗ありますよね。


CTは必要な時はとっても大丈夫って聞いたことあるけど、本当なのかな、、?

なんてあやふやな方もいらっしゃるかと。

 

ガイドラインを元にまとめてみました!

 

  今回の文献

急性腹症診療ガイドライン2025

産婦人科診療ガイドライン2023

 

  CTと被ばく量

受精後10日目までの被ばく

→胎児の奇形発生率は上昇しない


妊娠11日~11週

50mGy未満では影響なし、それ以上では胎児奇形のリスクUP


妊娠9~26週

100mGy未満では影響なし、それ以上ならば中枢神経障害発生リスク上昇

 

腹部・骨盤CTの胎児への平均線量 28.7mGy(6.7~60.5mGy)とされている。


上記のように胎児への影響があるのは、50mGyが一つのカットオフとなるが、多くの場合単回の腹部CTは50mGyに満たない頭部では0.005mGy以下、胸部は1mGy未満と、さらに少なくなる。

 

各ガイドラインでの記載は下記の通り。


急性腹症ガイドライン2025

CTは代替検査より有益と判断された場合にのみ行う

 

産婦人科 診療ガイドライン

診断用放射線は、通常50mGy未満の線量であり~胎児への影響は小さい。
 

勿論、エコーやMRIはうまく活用しなければいけませんが、仮に腹部CTが必要だとしても、単回の撮像の場合 胎児奇形や発達遅滞のリスクは極めて低いと説明してしまって問題なさそうです。


そして、必要性が高いなら、妥当と自信を持ってOKですね。

 

  ヨード造影剤使用はどう?

ヨード造影剤:イオパミドール

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとなっている。


起こす合併症として気をつける必要があるのは、胎児・新生児の甲状腺機能低下症である。


しかし、これまでにイオパミドールによる新生児の甲状腺機能低下や甲状腺腫の報告はないとのこと。

使用した場合、生後1週間は新生児の甲状腺機能をモニターするべきとするべきという意見はあるよう。(産婦人科診療ガイドライン2023)

 

したがって、造影剤使用についても、出産後の甲状腺機能フォローは必要かもしれないが、必要性が高いならばそのことを患者に説明のうえで使用することは妥当だといえそうです。

 

  まとめ

  • 胎児奇形や中枢神経障害のリスクは50mGy以上の被ばくが目安。
  • 頭部・胸部は勿論、腹部CTでも単回の撮像では多くの場合50mGyは超えず、リスクは高くないといえそう。
  • 造影剤使用による甲状腺機能低下は出産後のフォローは必要かもしれないが、これまでに新生児の甲状腺機能低下の報告はない。