末梢静脈路からノルアドレナリン、よく使いますよね。ただ、末梢から投与すると気になるのは、合併症。


血管外漏出、血栓性静脈炎、組織壊死、四肢虚血などなど

(Farm Hosp. 2025 Jan-Feb;49(1):T46-T52.)

 

高用量になるとCVをいつ入れるか?という議論が生まれます。

 

さて、今回は末梢でどれくらいノルアドレナリンを使ってよいか。

調べたものを共有します!

 

  投与時間

NAD末梢投与の組織障害発症は平均55.9時間。
ほとんどは投与開始6時間後以降に発生する。
J Crit Care.2015;30(3):653.e9-17.

 

したがって、例えば深夜帯にCV留置に慣れていない先生が対応する場合に、朝まで末梢で粘って、慣れている先生にお願いするというのも状況によってはありかもしれませんね。

 

  用量

0.01~0.1γが推奨(オランダ、外科手術)
Anesth Analg. 2020;131(4):1060-1065,

0.02~0.13γなら合併症なし
Enfermería Intensiva (English ed.) 2023;34(4):218-226

 

上記のように報告されており、概ね0.1γ強がボーダーラインになりそうです。

例えば、5A組成(NAD5ml+NS45ml)、体重50kgとすると、5ml/hrを超えてくるとCVを考慮してもよいかもしれませんね。

 

  その他

肘窩に20Gまたは18Gであることで合併症が減少するとの報告あり。
Ann Pharmacother.2022;56 (7):773-781,

 

  まとめ

  • 末梢NADの組織障害は、ほとんどの場合投与時間が6時間が超える場合に生じる。
  • NAD0.1γを超えたらCVを考える。

 

肺塞栓症、虫垂炎、腎盂腎炎、、

妊婦に造影CTが必要。でも、よく知らないと被ばくや造影剤使用って抵抗ありますよね。


CTは必要な時はとっても大丈夫って聞いたことあるけど、本当なのかな、、?

なんてあやふやな方もいらっしゃるかと。

 

ガイドラインを元にまとめてみました!

 

  今回の文献

急性腹症診療ガイドライン2025

産婦人科診療ガイドライン2023

 

  CTと被ばく量

受精後10日目までの被ばく

→胎児の奇形発生率は上昇しない


妊娠11日~11週

50mGy未満では影響なし、それ以上では胎児奇形のリスクUP


妊娠9~26週

100mGy未満では影響なし、それ以上ならば中枢神経障害発生リスク上昇

 

腹部・骨盤CTの胎児への平均線量 28.7mGy(6.7~60.5mGy)とされている。


上記のように胎児への影響があるのは、50mGyが一つのカットオフとなるが、多くの場合単回の腹部CTは50mGyに満たない頭部では0.005mGy以下、胸部は1mGy未満と、さらに少なくなる。

 

各ガイドラインでの記載は下記の通り。


急性腹症ガイドライン2025

CTは代替検査より有益と判断された場合にのみ行う

 

産婦人科 診療ガイドライン

診断用放射線は、通常50mGy未満の線量であり~胎児への影響は小さい。
 

勿論、エコーやMRIはうまく活用しなければいけませんが、仮に腹部CTが必要だとしても、単回の撮像の場合 胎児奇形や発達遅滞のリスクは極めて低いと説明してしまって問題なさそうです。


そして、必要性が高いなら、妥当と自信を持ってOKですね。

 

  ヨード造影剤使用はどう?

ヨード造影剤:イオパミドール

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとなっている。


起こす合併症として気をつける必要があるのは、胎児・新生児の甲状腺機能低下症である。


しかし、これまでにイオパミドールによる新生児の甲状腺機能低下や甲状腺腫の報告はないとのこと。

使用した場合、生後1週間は新生児の甲状腺機能をモニターするべきとするべきという意見はあるよう。(産婦人科診療ガイドライン2023)

 

したがって、造影剤使用についても、出産後の甲状腺機能フォローは必要かもしれないが、必要性が高いならばそのことを患者に説明のうえで使用することは妥当だといえそうです。

 

  まとめ

  • 胎児奇形や中枢神経障害のリスクは50mGy以上の被ばくが目安。
  • 頭部・胸部は勿論、腹部CTでも単回の撮像では多くの場合50mGyは超えず、リスクは高くないといえそう。
  • 造影剤使用による甲状腺機能低下は出産後のフォローは必要かもしれないが、これまでに新生児の甲状腺機能低下の報告はない。

 

初療でIE(感染性心内膜炎)を診断できるかは、ER医・generalistの腕の見せ所ですよね。


今回はその先、IEと診断して循環器にコンサルする際に画像検査をどうするか、についてを扱います。

造影CTやMRIって必須なのかな、、

なんて臨床疑問ないですか?


日循ガイドラインから、まとめてみました!

 

  今回の文献

感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)

 

  TEE

TEE:経食道心エコー

 

<感度>
TTE:自己弁70%程度、人工弁50%程度
TEE:自己弁・人工弁ともに90%以上


<特異度>
TTE・TEEともに90%程度

 

<日循ガイドラインでの推奨>

TTEで診断不能(陰性・画像不良)だがIEが疑われる

→Class1、LevelB


人工弁、デバイス留置例

→Class1、LevelB


TTE陽性例でも心内合併症評価目的

→Class2a、LevelC

IEと診断したら、ほとんどの場合TEEは行うと考えてよさそう。

 

  造影CT

<日循ガイドラインでの推奨>

全身造影CT→Class2a、LevelC

全身塞栓症評価目的に行う。

IE疑いに過ぎない患者でも推奨されている。

 

何故、無症状でも塞栓症を見つけにいくか?

 

一つは無症状でも臓器虚血を起こすリスクがあること、そして抗菌薬治療開始後も塞栓症を起こす場合は手術が推奨(Class1)されているからのよう。


ちなみに塞栓症は発症早期で可能ならば血栓除去、壊死しているならば壊死部位の切除が基本となり、抗血栓薬併用のエビデンスは乏しい
 

  MRI(脳)

脳血管障害、つまり脳塞栓および感染性動脈瘤による脳出血の可能性を疑って撮像する。


IE症例の50%程度で脳梗塞が見つかり、無症候性がほとんど。また、微小脳出血が見つかることもしばしば。


中枢神経塞栓症は予後不良因子として知られ、早期の手術が塞栓症予防につながるとされている

 

<日循ガイドラインでの推奨>

中枢神経症状ある場合→Class1、LevelC

中枢神経症状無い場合でもClass2a


シーケンスはDWI、Flair、T2*(微小脳出血評価目的)を最低限撮像。

脳出血・SAHがあった場合、CTAやMRAで感染性動脈瘤の検索を行う(Class1、LevelC)

したがって、ガイドラインによると中枢神経症状の有無によらずMRIは撮像した方がよさそうだ

 

  まとめ

どこまでをERで行って、どこからを入院後病棟で行うかは、病院によって異なると思います。


しかし、

多くの場合TEE・全身造影CT・頭部MRIが推奨されている

という認識でよさそうです。

 

 

 

今年も医師国家試験の合格発表がありましたね!

研修医からよく聞かれる質問。


「🐣先生、当直や救急関連でおすすめの本ありますか?」

 

そんな質問に答えるべく、研修医・初学者におすすめの救急関連の本を状況別にpick upしてみたので紹介していきます!

 

  ポケットブック系

当直に慣れるまでポケットブック系は絶対に1冊は持っておくべきです。

 

当直ハンドブック

実は🐣も書いています。

ハンドブック系は考え方を解説する本と実際の治療薬の量まで具体的に書いている本とに分かれますが、当直ハンドブックはどっちにも偏らず、まとまっており、疾患の網羅性にも長けています。また、出版してからほぼ毎年改定しているため、常に最新の情報です。自分が関わってるという分を差し引いても1番のおすすめです✨

 

京都ERポケットブック

有名です。こちらは症候別にまとまっているため、救急車が来てからというより、来る前に動き方を予習するのに有用です。色使いも非常に分かりやすいです。

 

  読み物系(最初の1冊に)

これらは救急ローテの始まりや当直の始まり前後に読み始めるとよいです。いずれの著者も超偉人の先生方なので間違いありません。


もう困らない救急・当直

症候別にポイントがまとまっています。

🐣はこれで研修医のとき勉強しました。


救急外来ただいま診断中

症候別もそうですが、救急での診療の考え方が分かりやすいです。エコー、心電図、血ガスは救急の3種の神器だと記載されており、これは受け売りで私が研修医に教えるときにもよく引用させていただくワードです。

 

血ガス白熱講義150分

正直150分もかからず読めます笑

そして、血ガスはERで最低限戦えるレベルに引き上げてくれます。全研修医におすすめです。

 

  読み物系(さらなるレベルアップに)

ちょっと慣れてきた人、救急志望の人、他科の人にはこれらがおすすめです。

 

研修医当直御法度

超有名な本です。ちょっと慣れた頃に陥りがちなERのピットフォールが実によくまとまっています。


救急外来ここだけの話

これってエビデンスあるの?という疑問を文献ベースの知識から解決してくれます。

 

緊急ACP 悪い知らせの伝え方、大切なことの決め方

強くおすすめする本の1つです。ACPについて、なかなかまとまって教わることは少ないですが、高齢化社会も進み、ちゃんと勉強するべき点ですよね。考え方から具体的な会話例まで、ACPのプロが解説してくれます。

 

  ICUも勉強したい人に(読み物系)

集中治療も勉強したいんだ!という人はこの3冊を。田中竜馬先生の本はどれも分かりやすいです。


やさしく分かる集中治療

ICUに関わらずERや内科管理のことを考えても、おすすめの本です。循環動態の基本、呼吸生理の基本がよくわかります。

 

病態で考える人工呼吸管理

初学者から人工呼吸をある程度触る人まで、結構幅広い人におすすめです。ひよっこも未だに良く読み返します。研修医の先生には結構難しいところもあるので、分かりそうなところだけ読むのもアリです。

 

こういうことだったのか!!CHDF

酸素投与やECMO、DICなども含めてシリーズ化されており集めるののおすすめですが、CHDFが断トツでおすすめです。

 

  ICU関連の調べものに

ICU頻用薬の使い方のリアル

調べものといいながら、これは読み物です。鎮静・鎮痛、PPiやDVT予防など、適応の話から実際の薬剤選択。トレンドまで本当に分かりやすく解説されています。

 

ICU、CCUの薬の考え方、使い方

こちらも読み物として使えちゃいますが、少し古くはなってきています。ただ、それでも名著で、カテコラミンの話などは秀逸です。

 

重症患者管理マニュアル

ICUの各症候の管理法について具体的かつ簡潔にまとめられています。良い意味で小難しいことが書いていないので、ストレスフリーに読むことも調べることもできます。

 

ICU book

正書。細かい話まで触れられており、ICUに興味がある人は一生の相棒になるかもです。

 

  各論を勉強したい人に

JATECガイドライン

外傷はJATECガイドラインを勉強するに限ります。

重症外傷の対応でなくても、頚椎の評価方法や外傷のCTの読み方など、研修医から勉強するのがおすすめです。勿論、JATECのコースを受講するのが何よりです!

 

骨折ハンター

骨折の画像や身体診察、シーネ固定やどのタイミングで整形コンサルトするべきかなどまでまとまっており、これさえあれば2次救急レベルの骨折初期診療はほぼ何とかなっちゃいます。

 

ねじ子のヒミツ手技

絵付きで色んな手技がまとまっています。


急性腹症の早期診断

ブラッシュアップ急性腹症

腹痛は絶対に1冊本を読んでほしいと思っています。前者は正書でおそらく数十年前からある本です。持っていたら上級医が褒めてくれるかも(笑)

腹痛は造影CT。というのは全然ダメな考え方と教わって、ひよっこ🐤は育ちました。病歴聴取と身体診察がとっても大事です。その考え方が非常にまとまっている2冊なので是非読んでみてください。


  まとめ

皆さん、読んでみたい本はありましたか?

私は指導医から、身長の高さより高いくらい積み上がる量の本を読めと言われて育てられました。(今も)気に入った本から手に取ってみよう!

 

  引用元

上記の画像は下記サイトから引用させていただきました。

https://chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=4383
https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/108
https://store.isho.jp/search/detail/productId/2306133700?srsltid=AfmBOop1fOGpqjqfZLQmQnI7pRCxudUn_XxobOqOqxmnur1C4IjUK1hV
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=4649
https://shop.miwapubl.com/products/detail/2587
https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/108777
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118835/
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758117562/
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=2230
https://www.jmedj.co.jp/book/search/detail.php?id=2239
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=1806
https://www.medsi.co.jp/products/detail/3638
https://www.medsi.co.jp/products/detail/3479
https://www.herusu-shuppan.co.jp/014-2/
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=2997
https://book.impress.co.jp/books/1119600011
https://www.medsi.co.jp/products/detail/3295
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=2681

 

 

脆弱性骨盤骨折の分類と治療

テーマ:


高齢者の脆弱性骨盤骨折、よく見ますよね。


この時期ならば、病歴のはっきりしない低体温患者で、CT見てみると脆弱性骨盤骨折があった!なんてことも何回か経験があります。


多くの場合は保存加療で良いという認識ですが、

ER医としては手術が必要なタイミング・整形に相談するタイミングは知っておきたいところですよね。


まとめてみました!

 

  今回の文献

  • Up To Date:Minor pelvic fractures (pelvic fragility fractures) in the older adult
  • J Orthop Sci. 2014 Oct 17;20:1–11.

 

  脆弱性骨盤骨折とは

高齢者の低エネルギーによる骨折や反復する負荷による骨折のこと。

多くの場合は恥骨骨折や仙骨翼骨折。

 

英語ではfragility frасtures of the pelvis (FFP)。

 

  Rommensらの分類

FFPの治療法を決めるための分類として、Rommensらが提唱した分類がある。

 

Rommenらの分類

(図表はJ Orthop Sci. 2014より)


Type1:片側・両側の骨盤輪前部の骨折

Type2:転位のない後方成分の骨折(前方成分骨折の有無に関わらない)

Type3:転位を伴う片側後方成分骨折+骨盤輪前部の骨折

Type4:両側の後方成分骨折

 

 

↑では、

Type1:a~b

Type2:c~e

Type3:f~h

Type4:i~k

 

  FFPの治療

保存加療+運動療法

Type1 or Type2


多くの場合、疼痛管理・理学療法のため入院が必要とされるが、合併症予防のために早期の運動開始も重要


ごく一部の仙骨骨折では荷重をかけていけない可能性はあるため注意は必要だが、仙骨翼骨折は大丈夫な事が多い

 

 

手術

※適応について明らかなエビデンスはない
Type3・4

→手術が必要となることが多い
Type2

→保存的加療で良くならない場合は手術を検討する

それ以外も疼痛が強い場合や可動域制限がある場合は、整形外科への相談は妥当とされる

 

Type2とType3の間で大きく方針が変わりそうです。この境目は後方成分の転位が大きいかどうかであり、読影ポイントとなりそうですね。


前方成分のみならば、まず保存加療と考えて問題なさそうです。(勿論、死冠動脈破綻などは注意が必要ですが!)

 

  まとめ

  • Rommansらの分類、Type2までならば保存加療、Type3以上はopeとなる可能性高い
  • Type2とType3の境目は後方成分の転位があるかどうか