表街道のレンタルビデオ店に並ばない迷画(名画)たち・・・
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 レンタルビデオ店が開店したので、早速借りに出かけたのが1985年頃のことである。当時はまだ「貸しレコード店」も軒並み開業しており、映画のサントラ盤をよく借りに行ったものである。借りてきたレコードといえば、よく覚えているのが「タクシードライバー」のLPであった。荻昌弘の解説が毎週楽しみであった「月曜ロードショー」で「タクシードライバー」が放映されたのだ。子供心にもこれが大人社会のある意味、歪んだ実情なのだと冷めた視点で観た印象が残る。というか、これは今まで観た映画とは何か違うぞという印象が正しいのだろう。映画とは正に自分が生涯、経験することのない「ロマン」を追体験することなのだ。

 あのバーナード・ハーマンのなんとも渋いメロディが余韻として残り、売春宿で人身売買をする悪の巣窟へ、アウトローの主人公が殴り込み、13歳の少女を救う物語なのだが、少女を助けた後に、幾日かたったのか、主人公は、また相も変わらずに日々タクシードライバーとして、街中を流すところなんかは、なんともアメリカ的であった。小生がこの作品以後、正統派で完全無欠な映画が観られなくなった記念すべき一本(トラウマ)といってもいい。

 もちろん、本作もレンタルビデオ店でレンタルして観た作品では、「イージーライダー」などと並び、かなり病んだアメリカ社会が浮き彫りなった作品といえる。カンヌ映画祭でグランプリを受賞した背景にも、今までに類をみない衝撃的な映画だったからではないかと思う。先ず主人公が異様である。ベトナム帰還兵で、とくに何がやりたいのでもなく、生きるためにてっとり早くできる仕事をしているかのようだ。映画は都心の裏側の闇、汚物の「ような」汚らしい描写を、主人公のモノローグで、視聴者に訴えかける。観客は既に、この時点でこの闇社会の住人である。

 「タクシードライバー」も本来ならば、オールマイティになれるような素材の映画ではない。恐らく、監督や配役が違えば、このように語り継がれるエンターテインメントにすらならなかっただろう。同じく、それは「表街道のレンタルビデオ店に並ばない映画」と化していたかもしれない。本ブログのテーマは、レンタルビデオ店に並ぶどころか、ビデオ化すらされなかった、そんな昭和の洋画・邦画を紹介できたらと思い、立ち上げた、それは映画史に弾かれた、汚物だらけのゴミバケツを漁り、再び、世に再生することなのである。