父親が死んだ


散々、家族に迷惑をかけて

熟年離婚され、密かに女とも別れ

ガンを患い

たった1人で死に向かおうとしていた




ワーカーさんから連絡をもらい

入院した時には既に末期で手遅れ

治療も延命措置も拒み

密葬にしてくれとの遺言もあり



心拍の低下の連絡をもらい

急いで駆けつけたけど



間に合わなかった…



恨む気持ちはどこかに消えていて

哀れみと悲しみと交差するような

そんな感情だった

息を引き取る1週間前に

ワーカーさんの計らいで

兄と姉と私だけ数分間の面会が許された

10年振りくらいに会った父親は

当時の勇ましい面影はなく

耳も遠くなり少し認知症の症状が

出ていたのに気がついた



肌身離さず持ち歩いていた

セカンドバックにはあの女にお金を貸していた

印が残されていた

借金まみれの、こんなジジイから

お金の無心をしていたあの女

父のケータイには数ヶ月前に電話した

発信履歴が残されていた

父が末期のがんに侵されていた事を

あの女は知っていたのだろうか

私が自分のケータイからかけた時は

やはり出なかった…

父のケータイからかけたら

恐る恐る出るのだろうか…


父が貸したお金を返せとは言うつもりもない

ただ、プライドの高い父が

家を競売にかけられて失くした事を

話していたのだろうか



父は借金から逃げて

その借金を家族が返していて

人に貸すお金があるなら

家族に返して欲しかったのに

ただ、それだはけどうしても



どうしても言ってやりたい



悔しくて悔しくて








ただ、その気持ちだけが心の棘となっている