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モーニング娘。'14

"TIKI BUN/シャバダバドゥ～/見返り美人"

と言う訳で、全3回に渡り書き散らかして来た、ボーカリスト・道重さゆみの魅力考察、とは名ばかりの「道重好きのためのプレイリスト」。

苦難の船出となったデビューから自身の飛び道具特性に自覚的になる迄の「アイドリング期」編はRESEARCH WORK♯26、

洗練されたパフォーマンス集団へと登り詰めんとしていた時期のグループ内で自身の在り方を磨き、無二のの輝きと存在感を体得した「プラチナ期」編はRESEARCH WORK♯27へどうぞ。

それにつけても、今回こうして取り上げたクラシックをイヤホンでBGMにしながら今まさにブログを書いてるオレなんですが、流石に頭がおかしくなって来る。

脳波を揺らすヘナチョコボーカルの魔力。さゆみ、流石よ。

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モーニング娘。"恋愛ハンター"

キレのあるフォーメーションダンス×硬いキックとスネアが印象的なエレクトロサウンドを武器に躍進し、久々のオリコン首位に久々の大型音楽番組露出にと不死鳥の如き再生を遂げたグループ。

「モーニング娘。が好き」と言うのがもはや恥ずかしくも何ともない久しぶりの状況に「ついにこの時が」と無駄に感慨深いオレ。

その全ての始まりと言えるのが多分本曲、'12年リリースの49枚目。

タブステップ要素を盛り込んで、オレの周囲では寧ろ対非アイドルヲタからの受けが良かった本作。

ただし遡れば、"Say Yeah! -もっとミラクルナイト- "、ここ数年でもシンセの厚い四つ打ちやトランス要素を含んだアプローチと言うのは定期的に発表されて来た訳で、取り立てて目新しい要素はないハズが、コードや歌詞、声を盛り上げる為の要素と言う配置から「エッジの立ったトラックで聴き手を踊らせる」と言うコトに意識的になった変化は大きい。

最近遅れて読んだ「FLOORnet」のつんくインタビューも読み応えがありましたが、

「歌が格段にうまいメンバーがリードボーカルを務め、その声を加工してしまうと、違和感が生じてしまう。いまのメンバーは平均年齢が全体的に若く、ボーカルを加工したり、エッジを効かせても違和感が生まれることはほとんどないので、モーニング娘。はいまなら何をやってもこなすことができるような気持ちがあるんです。」と言うように、単なる気まぐれではなくクリエーションに対する明らかな展望があってのコト。

特にオートチューニングやエフェクトの餌食になる場面の多い道重、そのピッチも怪しいし伸びも悪い、ネバっこい魅惑のキャットボイスは逆に加工処理されたコトで最高の形に活かされたように思います。

違和感の無さと、逆に他メンバーの声質とのギャップから生まれる心地良い違和感として妙味を与え、"レインボーピンク"から始まり、"It's You"～"大きい瞳"～"Fantasyが始まる"～"好きだな君が"と言ったここに至るまでのメイン及びソロ曲での「お遊び」で掴んだ何かがある種の本筋と言えるシングル曲にフィードバック、今更ながらこの裏道を辿れば何だか無駄に感動的です。

さんまの番組で「初めてシングルでソロパートをもらったのに、聴いてみたら加工されててショックだった」と自嘲気味に語り、爆笑を誘った道重ですが、もちろんそんなのリップサービスでしょうし、ここまでセルフプロデュースに長けた彼女のコト、自分がきちんと役割付けられたコトにさぞ満足でしょう。

その上でそんなバラエティ向きなエピソードにまとめ上げるクレバーさ、オレのクソオンナアンテナを多いに刺激します。

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モーニング娘。

"One・Two・Three/The 摩天楼ショー"

続く記念すべき50枚目シングルにして、道重リーダー就任後初のシングル。

その破壊力は"恋愛ハンター"以上で、脱アイドルソングどころか脱J-POPシフトさえ視野に入れた振り切り方。

件の「FLOOR net」のインタビューでもつんく自ら語ってる通り、何せ、コード動かねえ動かねえ。

これに比べると前作の"恋愛ハンター"はアニソン的高揚感がまだ残ってる。

で、全体を覆う硬質でプラスティックなエレクトロサウンドと無残に加工されたボーカルも体温ゼロ。

メロディではなくビートやサウンドで聴かせようとすると？の難題にあえて「アイドルソング」と言う枠内でやってのけたつんくのチャレンジ精神とそれに応えたアレンジャー・大久保薫の手腕に平伏したい。

そしてこの歪みまくったトラックの中でなお有機的な何かを添えるメンバーの生な煌めき。

そして何よりコレが言いたかった。「あ」「い」「し」「て」「る」の「る」だけで魅せれるボーカリストなんてさゆみ、アンタぐらいよ。

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モーニング娘。"(13)カラフルキャラクター"

で、そんな2作連続でのエポックメイキングなシングルコンボを収録した'12年発表の13thオリジナル。

もはや恒例となった道重メイン曲は久々の完全ソロ・"ラララのピピピ"。

何となく小西康陽ワークスを彷彿とさせるタイトルからしてイライラしますが、これが真面目にふざけてます。

前作収録の"好きだな君が"を安易にトレースしたと言えなくもないナンセンス電波テクノポップではあるんですが、いよいよ道重ソロ世界観の完成系にタッチしたようなこの安定感・まとまり感は、このボーカルの不安定感からすれば奇跡的なコトよ。

道重派には何の不満もない安定の逸品。

アウトロがフェードアウトなのは雑な感じがして残念。

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モーニング娘。"ワクテカ Take a Chance"

続く、51stシングルも同年リリース。

Aメロ～Bメロ～サビ的なJ-POPの雛形さえ脱構築、創造的破壊を繰り広げ始めたつんく。

ここでも掴みにくい構造に四苦八苦させられつつ、加工された道重ボーカルによる

「どれが本気でどれを信じる」

「誰が本気で誰を信じる」

もう、ここがサビってコトで良いよ。

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モーニング娘。

"The Best! ～Updated モーニング娘。"

この間、52nd・"Help me!!"で3年8ヶ月ぶりのオリコン首位獲得、その後も"ブレインストーミング"～"わがまま気のまま愛のジョーク"と3作連続首位でトリプル良い事があったグループの勢いそのままに発表された企画盤。

全盛期のクラシックと近年のシングルをバランス良くセレクトし、リアレンジ＆セルフカバーを施したベストアルバム。

道重ファンの注目はソロバージョンとして再生された"歩いてる(updated)"。

愛くるしくチャカポコした四つ打ちと煌びやかな音選びはちょうどPerfumeぐらいのバランスで可愛い。

エフェクトされたボーカルもプラスティックなのに有機的と言う絶妙な采配。

ボーカリスト・道重の調理方法が完全にメソッド化して来た手グセ感には賛否もありそうですが、楽曲本来の良質さもあってオレは全然好き。

卒業コンで披露された映像ではウッカリ泣きそうになっちゃったもの。

そしてこのアルバムや側近のシングルを持ってバラエティや音楽番組を巡回。

「テレフォンショッキング」や「しゃべくり007」、「ミュージックステーション」などオレがチェックしただけでも道重先輩のトークスキルで全ての出演番組で爪痕を残したのは流石。

もちろんパフォーマンスも含めてですが、一回一回無駄な戦い方をしなかったコトが今の第2の全盛期に繋がったんでしょうし、後輩に残したモノも大きい。

そんな道重の振る舞いや姿勢、その意義にはヲタから喝采を向けられて然るべきものでしょうし、オレもこんな先輩や上司が欲しいゼって話よ。

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モーニング娘。'14

"TIKI BUN/シャバダバドゥ～/見返り美人"

そして、卒業へ。

メンズ絡みのスキャンダルで、立つ鳥跡を濁しまくって辞めて行くパイセンの背中を見ながらも、自身は役割を全うし、完璧な幕引きで華々しく卒業して行く姿は、まさにこうゆうのを有終の美と言うんでしょう。

置き土産になったラストシングル、トリプルA面のうちの1曲・"シャバダバドゥ～"は、およそ12年と言うアイドルとしては異例な程のロングランな活動期間に断続的に提示し続けて来た道重的世界観を、完璧な箱庭として完結させる名曲。

元来アイドルソングとはそのアイドルのテーマ曲であるべき、と言う自論を持つオレなんですが、それは個人のキャラクターやパーソナリティ、或いはパブリックなイメージ、更には欠点やスキャンダラスな部分さえ全て貪欲に取り込み、反映させ、ショーアップするという試みこそ「個人の素材」を武器にするアイドルがやるべきコトだと思う、と言うような話で、

尚且つ抜群に可愛いらしくキラキラとしたモノを内側から撒き散らし、今まさに青春と言うモノをショービズに掛ける勇姿をこそサウンド化し、たとえばそれが取るに足らない初恋のときめきに纏わるアレコレだったり、夢への不安な気持ちだったり、たとえそれがジジイの作詞家によりコントロールされたモノであったとしても、でもそれを歌うアイドルの中の僅かなリアリティと呼応し合うコトによってまるで自己言及的な言葉のようにこそ聴こえ、そのアイドルの世界観はより強固な構築美を見せる、と言うような。

で、そんなファンタジーなのかノンフィクションなのかもわからない中、わずかなリアリティに胸が熱くなる感覚ーそれこそが「萌え」と言うモノなのでわ？と、オレは解釈してる。

で、肝心の楽曲自体にも抜群の説得力をもたらす訳で、それこそが歌と歌い手の幸福な関係性だとも思うのね。

そこ行くと既にパブリックイメージと言うモノが完璧に構築された特異なアイコンにして、プロデューサーにオモチャにされてこそ輝く道重さゆみの本シングル曲に置けるセルフオマージュ的な世界観、そのスマートな提示の仕方は逆に話が上手く行き過ぎてて腹立つぐらいなんだケド、「コレで本当に最後」と言う事実があるからこそ、大団円としてのこの「世界観の総決算」を鼻白む物にさせてない。

リアルなエピソードを蕁麻疹ギリギリの可愛いらしく、それでいてこの魅惑のウィスパーボイスで発語されてこそ価値を持つ言葉選び、ウッドベースが渋く光るピチカートファイヴテイストな、ジャジーなガールポップと言うクラシカルなアプローチさえ「道重だからアリ」になってるのがズルい。

そして黙って聴いてても感動はしちゃう訳ですが、重要なのがコレ全て「盛大なギャグ」にも見えると言うおかしみ。

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徹底的に作り込まれたミュージックビデオも最高にキモ可愛い。

最後の最後にこんな痛快な最後っ屁で勝ち逃げし、あの「重ピンク」がグループの置かれた当時のタイミングゆえギャグとして成立し切れなかったコトのリベンジまでも達成。

さゆみ、あんたカッコ良過ぎよ。

ここまで箱庭的に自己の世界観と様式美をパーフェクトに構築し、俯瞰の目でセルフプロデュースし、歌でもバラエティでも功績を残しファンにもメンバーにも愛されたメンバーはもしかしたら後にも先にも彼女しか居ないかも知れない。

青春のすべてをアイドル活動に捧げた偉大なオンナよ。

でも、もしかしたらレジェンドになるのは早いのかも知れない。

まだまだ見たコトのない景色をオレにも見せてくれる、それを期待して復帰を待つわ。ってコトにしとけよ。

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見つかってくれてありがと。

RESEARCH WORK♯28