今のお家に来たばかりの話し
ベランダを横切る白に黒斑のネコが
「お初どす…」と
挨拶しに来たように部屋を覗いた
あたし 近眼やから
はっきり見えへんのやけど
何か
どこかに
違和感を感じてメガネをかけてみた
…前足がひとつ無い…
目が離せずにいると 決して『キレイ』ではないハズなんだけど
「ほな…」
と 気品にも似た身のこなしで行ってしまった
『キレイ』ではないのに 『キレイ』なのだ
あたしはその日から
『この子』のことを
『おつきさん』
と名付けた
瞳が「満月」の色みたいだから
休みの日になると
必ずほぼ同じ時間に庭を通る『おつきさん』を見た
そして律儀に
「まいどおおきに…」
と 挨拶をしていった
ふと思う
“足がない”という『ハンディ』は
“生きていく”には大変なハズだ
カラダに残る“キズ達”が物語る
でも
その『不自由さ』を微塵も感じさせない
むしろ『キレイ』なのだ
人間は少しのささくれでも落胆するのに
潔さに徹する『おつきさん』の姿に
恥ずかしさを覚える
『イキテクチカラ』
人間が失いかけたものを 『この子』らは持っている
ホント突然
『おつきさん』は現れなくなった
心配で心配で…
でも…その内 諦めはじめた
そんな頃に
首にピンクのリボンを付けて
艶やかな毛並みで
でも やはり前足のひとつ無い 『おつきさん』が
「こりゃお久でございますなぁ…」
と 気品にも似た身のこなしで行ってしまった
「ヒトも捨てたモンじぁないですよ…」
後ろ姿でそう言われた気がした
