「死後の世界」は存在するのか(その2):臨死体験者に実際に起きていること
第2章 臨死体験者に起きる持続的変化ところで、臨死体験(NDE)研究において、現在もっとも注目されているのは、体験の内容そのものではありません。目下の焦点は、体験後に何が起きているのかです。研究者たちは、臨死体験者に共通して見られる変化を、持続的変化(AfterEffects)と呼んでいます。重要なのは、これらが一時的な感情の高揚や、衝撃体験に対する短期反応ではないという点です。多くの追跡研究において、数年から数十年という単位で、安定して持続する変化が確認されています。1. 死への恐怖が著しく低下する臨死体験者に最も一貫して報告されている変化は、死に対する恐怖の大幅な低下です。これは単に、「死後の世界を見たから怖くなくなった」という単純な話ではありません。研究報告を詳しく見ていくと、起きているのは次のような変化です。 死を「完全な消滅」として捉えなくなる 死を、人生の断絶ではなく「区切り」や「移行」として理解するようになる 死に関する話題を、極端に避けなくなるその結果として、終末期、喪失、老いといったテーマに対しても、現実的で落ち着いた態度を取る傾向が強まります。恐怖が消えるというよりも、死が人生を脅かす絶対的な脅威ではなくなると表現した方が近いでしょう。2. 利他的行動が増え物質主義が後退する臨死体験後、価値観の優先順位が大きく組み替えられる例は、数多く報告されています。この変化は、道徳的理想を獲得したというよりも、人生における評価基準が再編成される現象として理解する方が適切です。具体的には、次のような傾向が一貫して観察されています。 他者への共感性が強まる 援助行動・利他的(向社会的)行動への動機づけが増える 競争や勝敗、優劣への関心が低下するこれらは、「利他的になろうと努力した結果」ではありません。多くの場合、自己価値や人生の意味を支えていた基準そのものが変化した結果として現れています。臨死体験後、多くの人は、「どれだけ得たか」「どう評価されるか」ではなく、「誰と、どのように関わって生きているか」を、人生の中心的な評価軸として捉えるようになります。そのため、他者に手を差し伸べることや協力することが、特別な決断ではなく、日常的で当たり前の選択として行われるようになります。同時に、次のような変化も確認されています。 収入 地位 所有といった物質的指標に対する心理的な執着が、全体として弱まる傾向です。ここで重要なのは、この変化が「世俗的価値の否定」や「禁欲的態度」への転換を意味していない点です。臨死体験後に起きているのは、価値の放棄ではなく、価値の置き直しです。多くの研究が示しているのは、次のような心理的変化が重なって起きているということです。第一に、「死が必ず来る」という事実が、生活の前提として組み込まれる。臨死体験者に共通して見られるのは、単に「人はいずれ死ぬものと知った」という変化ではありません。「死は例外的な出来事ではなく、現実に起こり得るものだ」という感覚が、日常の判断の前提に入ってきます。この変化が起こると、いずれ確実に手放すことになるもの――収入、地位、所有といった要素に、人生の中心的な意味や安心を預け続けることが、現実的ではない選択に見えてきます。これは価値観の否定ではありません。永続しないものに、人生の重心を置きすぎないという、きわめて実際的な判断です。第二に、「成果や評価がなければ自分は不安定になる」という感覚が弱まる。臨死体験後、多くの人は、「成功していなければ価値がない」「何かを達成し続けなければ自分を保てない」という感覚から、距離を取るようになります。その結果、収入や地位、所有は、「自分を支えるために不可欠な条件」ではなく、人生の一部を構成する要素の一つとして位置づけ直されます。物質的成功を求めなくなるわけではありません。それが「なければ自分が崩れてしまうもの」ではなくなるのです。第三に、「意味を感じる基準」が、所有や達成から関わりへと移行する臨死体験後に語られる幸福感は、「たくさん得た」「勝ち続けている」といった感覚ではありません。多くの場合、それは、「自分は誰かとつながって生きている」「自分の生が、誰かに影響を与えている」という実感として表現されます。このタイプの意味づけにおいては、・どれだけ持っているか・どれだけ評価されているかよりも、・誰と関わっているか・どんな関係を築いているかの方が、人生の手応えを左右します。その結果として、他者への配慮や援助は「立派な行為」ではなく、自然で納得のいく行動選択として増えていきます。したがって、この変化は価値の否定ではありません。人生において何に時間とエネルギーを投資するかという判断基準が、合理的に、そして長期的に組み替えられた結果なのです。3. 人間関係が「量」から「質」へ再編される臨死体験後、人間関係のあり方が変化するケースは少なくありません。これは突発的な性格変化というよりも、対人関係を評価する基準そのものが変わる現象として理解できます。研究や追跡調査でよく報告されているのは、次のような変化です。・表面的な付き合いや惰性的な関係を、自然に減らすようになる・感情的に正直でいられる関係を選ぶようになる・支配・競争・損得を軸にした関係性を避ける傾向が強まるこの結果として、長年続いていた人間関係が解消されることもあります。しかし、ここで注意すべき点があります。これらの変化は、社会的孤立や対人適応の低下を意味していません。むしろ多くの臨死体験者は、関係の「数」は減ったが、関係の「納得感」「満足度」「信頼感」は高まったと報告しています。心理学的に見れば、これは人付き合いを減らしたのではなく、人生において誰とどのように時間と感情を共有するかという選択基準が、再編成された結果と説明できます。臨死体験を経て多くの人が獲得しているのは、「すべての関係を維持する必要はない」という諦念ではありません。限られた時間の中で、意味のある関係に関与しようとする、現実的な判断なのです。その意味で、この人間関係の再編は、喪失ではなく、優先順位の変化として捉える方が正確でしょう。4. 主観的幸福感は「快楽」ではなく「意味」に移行する臨死体験者に見られる幸福感の変化は、心理学的に非常に興味深いものです。それは、 気分が良くなった ポジティブ感情が増えたといった快楽的幸福ではありません。多くの場合、次のように語られます。 人生に意味があると感じられる 自分の生を引き受けている感覚がある 多少の困難があっても、納得して生きられるこのタイプの幸福感は、主観的幸福感(Subjective Well-Being)の中でも、「意味」「統合」「受容」に近い成分です。しかも重要なのは、これらの指標が20年以上にわたる追跡調査でも、大きく低下しない点です。一過性の心理的変化では説明できない安定性が、複数の研究で確認されています。5. 研究者が一致している点臨死体験研究を長年牽引してきた精神科医ブルース・グレイソンは、持続的変化について、次の点を繰り返し強調しています。 体験の解釈は人によって異なる 世界観や宗教観も一様ではない それでも、人生への影響には顕著な共通性があるつまり、ここで問題になっているのは、体験が「本当だったかどうか」ではありません。中間的まとめ問題は体験の「真偽」ではなく「影響」です。臨死体験という主観的体験は、それが何であったにせよ、人の価値観・行動・人間関係・幸福感を、長期にわたって変化させています。この事実は、信じるかどうかとは別にして、すでに観察されているものです。そして次章では、こうした変化が極限体験に限らず、「死後も人生が続く」という前提を持つ人々にも共通して見られるのかを、行動研究の視点から検討していきます。📚 参考文献:臨死体験(NDE)による持続的変化と支援【学術論文:変容のエビデンスと課題】Holden, J. M., Kinsey, L., & Moore, T. R. (2014).Disclosing and Discussing Near-Death Experiences: Methodological and Clinical Implications. Journal of Near-Death Studies, 32(4), 189–211.(体験の開示と臨床的ケアについて)Khanna, S., & Greyson, B. (2014).Near-death experiences and spiritual well-being.Journal of Religion and Health, 53(6), 1605–1615.(スピリチュアルな幸福感への影響)Stout, Y., Jacquin, L., & Atwater, P. M. H. (2006).Six Major Challenges Faced by Near-Death Experiencers.Journal of Near-Death Studies, 25(1), 49–62.(体験者が直面する6つの主要な課題)Tassell-Matamua, N., & Lindsay, N. (2016).Mortality Awareness and Near-Death Experience: Examining the Relationship. OMEGA—Journal of Death and Dying, 74(3), 323–344.(死生観と死への恐怖の低下)Groth-Marnat, G., & Summers, R. (1998).Changes in Values, Beliefs, and Attitudes Following Near-Death Experiences.Journal of Nervous and Mental Disease, 186(11), 702–709.(価値観や態度の変容に関する定量的研究)【参考図書:体系的に学べる定番の著作】Atwater, P. M. H. (2005). Beyond the Light: What Isn’t Being Said About Near-Death Experiences. AVREACH Press.(体験後の日常生活への適応と困難を詳しく記述)Morse, M. (1992).Transformed by the Light.Villard.(邦訳:メルビン・モース著『「光」にふれた子供たち』/子供の体験とその後の人生への影響)Ring, K. (1984).Heading Toward Omega: In Search of the Meaning of the Near-Death Experience.William Morrow & Co.(邦訳:ケネス・リング著『オメガ・ポイントへの道』/価値観の変容を体系化した古典的名著)Sabom, M. (1982).Recollections of Death: A Medical Investigation.Harper & Row.(邦訳:マイケル・セイボム著『「死」の医学的検証』/初期の医学的調査と死への恐怖の変容)Sutherland, C. (1990).Reborn in the Light: Life After Near-Death Experiences.Bantam.(社会学的視点から体験後の自己再構築を論じた重要書)--前半は学術的なエビデンス、後半は系的に学べる定番の参考図書(古典・概説)として分けています。読者がアクセスしやすいよう、日本語訳があるものにはその旨を付記しています。(続く)麗月相談室 所長 中村雅彦(ペンネーム:はたの びゃっこ)中村 雅彦 (Masahiko Nakamura) - マイポータル - researchmapresearchmapは、日本の研究者情報を収集・公開するとともに、研究者等による情報発信の場や研究者等の間の情報交換の場を提供することを目的として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営するサービスです。researchmap.jp 新著プロジェクト進行中『新著進捗状況:『もう無理しない ― “生きづらさ”をほどく処方箋』』新著『もう無理しない ― “生きづらさ”をほどく処方箋』「二十四時間三百六十五日、死ぬまで働け。しかも笑顔で。」――この国の“生き方マニュアル”に、ふと疑問を…ameblo.jp 巫師麗月チャンネル巫師 麗月皆さま 巫師 麗月の動画サイトです。主に神社等への参拝記録を投稿しています。 よろしくお付き合いくださいませ。 ブログのURL 巫師 麗月のブログ https://ameblo.jp/qinisp0215 巫師麗月相談室 https://qinisp00215.amebaownd.com/ www.youtube.com 麗月相談室はこちらへ↓麗月相談室麗月相談室では、霊媒師・呪術師としての知見と心理学を融合し、霊的問題の解決・占い・祈祷・供養を提供しています。スピリチュアルな悩みを専門的にサポートし、心と魂の安寧へ導きます。qinisp00215.amebaownd.com よろしければ下のバナー クリックお願い申し上げます。↓にほんブログ村