花火の音とバイクの音、パトカーの音や人混みからところどころ聞こえてくる声の中、私たちはお互いを探り合いながら微妙なテンポで会話をしていた。
「人、多いね。」
「ね。こんな大きい祭りきたの本当久しぶり。」
「確かに。花火見えないね全然。」
「人多すぎる。」
「うん。」
私たちを置いて前の4人は人混みの中に消えていく。
「やばいこれ置いてかれちゃう。」
「歩くの早くない?あいつら。」
「私ゆうやくんとはぐれたらおわりだ。」
「俺も終わり。」
はぐれないように目配せしながら必死に人混みをかき分けた。やっとみんなのところに追いついた時、私たちは2人で笑い合い、肩が触れ合っていた。
「のぞみこっちおいで。」
はぐれそうになっていた私に気づいたしゅんくんが呼ぶ。
「ゆうやくんいるから大丈夫だよ。」
咄嗟にゆうやくんのシャツの裾を掴んでしまったことをすぐに後悔したが放すことはできなかった。
「ゆうやは後ろ歩いてあげて。」
私の手にゆうやくんの手が一瞬触れる。しゅんくんの手が私の肩に回される。諦めたようにゆうやくんの方を見るとまっすぐ真剣に私を見つめ返す彼がいた。私は、後ろから彼の目線を感じながら肩から腰に回された手を拒むのを諦めて笑いながら歩き続けた。
「ゆうやと何話してたの?」
「別に何も。人多いねーって。」
「あー、そーなんだ。」
「なんで?」
「いや、いつも話してるイメージないのに楽しそうにしてたから。」
「私が楽しそうにしたら悪い?」
冗談ぽくきいた私に少し慌てて、いやいやそーいうわけじゃない、と笑っていた。
だいぶ進んで人混みから少し抜けた頃、しゅんくんは私の腰から手を離した。
「屋台行く?」
「いいよー。」
しゅんくんがれなたちと話してる間に私はそれとなくゆうやくんの隣に移動した。
「しゅんと付き合ってんの?」
「え?付き合ってないよ。」
「え、あれで?」
「あれで。」
「やばあいつ。」
「私、ゆうやくんの隣がいい。」
お互いに下を向いたまま気まずい沈黙が流れた。
「うん。俺の隣いなよ。」
「うん。いる。」
みんなが何の屋台に並びたいか話している間私の頭の中はそれどころじゃなかった。今は何を食べても同じ味しかしない気がした。
「のぞみは何食べたいのー?」
「んー、別になんでもいいから合わせるよ。」
れなとはづきが気を遣って聞いてくれたが、私の返事にはまるで覇気がなかった。
それぞれが食べたい屋台に並び、みんなで持ち寄って食べた。私は唐揚げを買ったが、なぜか2個で胃もたれして残りはれなたちにあげた。
「花火見えるとこまで移動しようよ。」
「どっち行ったら見えるんだろー。」
「向こうじゃない?みんなあっち向かってるし。」
「確かに。ちょっと移動するか。」
私たちは神社から出て花火が見えやすいであろう近くの公園まで移動することにした。
「のぞみ。」
「大丈夫だって。私1人でも歩けるよ。」
「はぐれそうだもん。おいで。」
「私、、」
「ん?」
ゆうやくんの隣がいい、なんて言ってしまったらしゅんくんがゆうやくんのことどう思うかわからないし、なによりゆうやくんが言ってほしくないと思っていたら嫌われてしまうと思って言葉が喉につっかえてしまった。諦めてしゅんくんの横に行こうと思って一歩踏み出した。
「俺いるから。大丈夫だから。」
踏み出した私の肩に手を置いたのはゆうやくんだった。しゅんくんとは違い肩に手を『置いた』とこが好きだった。
「私、ゆうやくんの隣にいたい。」
「あっそう。2人そろってはぐれんなよー。」
しゅんくんは一瞬怪訝そうな顔をしたあと何事もなかったかのように返事をして前を向いた。彼は気まずそうに手を離すと私の方を見た。
「ありがとう。」
「別に全然。」
「はぐれないようにしないとね。頼んだよゆうやくん。」
「任せとけ。」
2人だけの空気で2人だけで笑っている空間が好きだった。
神社から出た途端に人の量が一気に増えた。しゅんくんは拗ねたように私たちをいないものとして扱っていた。
本当にはぐれてしまう気がして少しだけゆうやくんに近づいた。手が触れる。反射的に手を引いてしまう。さっきしゅんくんの手が肩に触れた時にはなかった感覚だった。
気にしていないように降ろした右手に彼の左手が触れる。今度はそのまま手を引かなかった。
彼の手がゆっくりと手のひらの方に動くのがわかった。私の手の中に彼の手が重なる。私たちは手を繋いだ。
そのまま何も言わずまっすぐ前を見て歩き続けた。少しずつ手を緩めて指を絡める。
バレないようにと彼の方を見ると彼も私を見て、そして笑った。その笑顔で心が解けていくのがわかった。
(※男女6人で夏祭りに行きました!っていう設定のオリジナルストーリーです)