前に~美嘉からヒロへのプロローグ1~をみんな見せたけど、次ゎ~ヒロから美嘉へのプロローグ~だょ☆★

チョイ遅いヶドこれまた感動だヵら読んでみてぇぇ猫ベロは~と





「恋空」サイドストーリー プロローグ2
「もっと…」 ~ヒロから美嘉へのメッセージ~

当たり前だと思っていた。

幼稚園に通い、小学校へ進学、中学に続き、高校生活を送る。
専門学校か何かを卒業して、社会に出、現実に揉まれる。
そんな自分を支えてくれる大切な奴がいて、そいつを愛し、愛され、やがて新しい命を授かる。
新しい家庭。
甘えてぐずる子供を膝の上に寝転がし、頭を撫でてやる。
台所では、料理を作っている奥さんと呼ばれる大切な存在が、「いいお父さんね」と言って笑う。
そしていつか俺は定年退職をし、老後を囲碁やら将棋やらの趣味に没頭する。
子供の結婚式には強がって涙を堪え、多分、孫にとっては「ちょっと厳しいけど、会うたびお小遣いをくれる本当は優しいおじいちゃん」になる。

何気ない毎日。
けれど、とても充実した毎日を送ってゆく。
朝を迎えることに、喜びを感じる。
そしていつの日か寿命を迎え、大切な人々に囲まれて静かに生涯を閉じる。
最後に見る景色は、きっと、いちばん大切な存在の笑顔。
当たり前だと思っていた。
何もかもが。
信じてやまなかった。
そういった未来が訪れるということを。

俺、知らなかったんだ。
風がこんなにも柔らかいってこと。
花がこんなにも鮮やかなんだってこと。
虫がこんなにも小さいってこと。
朝日がこんなにも綺麗なんだってこと。
月がこんなにも丸いんだってこと。
太陽がこんなにも眩しいんだってこと。
雨がこんなにも鋭く冷たいんだってこと。
雲がこんなにもゆっくりと流れるんだってこと。
空がこんなにも青いんだってこと。
誰かに出会うって、すごく素晴らしい一瞬なんだってこと。
誰かに支えられるって、すごく頼もしいんだってこと。
言葉は大切だってこと。
未来があるというのは、とても幸せなんだってこと。
一日一日を生きることが出来るのは、とても幸せなんだってこと。

いなくなることが、悲しいわけじゃない。
守ってやれなくなることが、何より、悲しいから。
いなくなることが、苦しいわけじゃない。
叶えられない約束が増えていってしまうことが、何より、苦しいから。
離れ離れになるから、胸が痛いんじゃない。
離れ離れになるから、より、愛しく思えるんだ。
もし、明日という日が訪れる保障があるのなら、ゆっくり進んで行けばいいけれど、
明日が訪れるかなんてわからないからこそ、急ぐ。焦る。早足になる。
どうしていいのかわからない。

ただ、一つだけ、癒えることは、幸せになって欲しい。
誰よりも。
「さようなら。」

本当は、「また会おうって」言いたかったんだ。
でも、今の俺にその言葉は、あまりに重すぎて、言えない。
俺が隣にいなくても、きっと、幸せになって欲しい。

言いたいこと、もっと、いっぱいあったはずなのに。
してやりたいことも、もっと、もっと、もっと。
それなのに、出来ないことのほうが多かった。
「どうして俺なんだ」って、何度、恨んだかわからない。
俺じゃなきゃいけなかった理由を、考えてみたりもしたけれど、
いつも答えが出て来ることはなくて。
それを運命とまとめて呼ぶには、あまりに切なすぎて。
明日の空が、どんなに明るくても、俺はもうそこには、いないかもしれない。
明日、目を覚ませば、俺はもう・・

何年後、君の隣には、どんな奴が並んでいるのだろう。
また会おう。
その時は、二人とも、とびきりの笑顔で。
初めて出会った時のように、また、始まって、ゆっくり、ゆっくり、進んで行って、
そして今度こそは、当たり前だと思っていた、幸せな未来が、待っていますように。


美嘉さん作のこのオリジナル原稿を、「恋空」サイドストーリー プロローグ1で瀬戸康史さんがナレーションしているよ!