4.6点/5点

 

涙を多く流した映画が、傑作だとは限らない。

ただ、この映画は紛れもなく傑作であり、私の人生でおそらく最も涙を流した映画となった。
 
決して不幸を嘆くお涙頂戴だとは思わない。
 
あまりにも強い愛、あまりにも強い生きる力に心が震え、何度も涙が溢れてしまう。
 
物語はシンプルだ。末期がんで余命まもない死にゆくお母ちゃん=宮沢りえが、残りの時間に家族に何をすることを決断したのか。
 
失踪した夫を連れ戻す。
 
銭湯を再開させる。
 
いじめに遭っている娘に立ち向かう勇気を伝える。
 
そして、、、より重い決断をもって、家族に向き合ってゆく。
 
とにかく宮沢りえ扮する双葉=お母ちゃんの存在が凄まじい。
 
長い彼女の役者人生を全て詰め込んだような圧倒的なエネルギーで迫ってくる。
 
決して、綺麗ごとでも、優しさだけでも済まされない、家族に対する厳しくも深い愛情に「そこまで、あなたは、家族と向き合えますか?」と痛烈に問われた気がした。
 
家出中の夫に、オダギリジョー。情けないながらも妻を想う気持ち、何にも行動できない彼が絞り出す愛情表現が、、、これまた、たまらなく胸を突く。
 
そして、娘の杉咲花が素晴らしい。
 
「私は最下層の人間だから・・お母ちゃんとは全然違うから・・」
 
陰湿ないじめを受けている彼女の痛みが切ない程に伝わってくるが、双葉の娘に対する容赦ない態度が、様々な想いをこちらに呼び起こす。
 
何が正解かわからない。
 
ただ、本気でぶつかりあう母と娘の姿に心震え、そして、また予想だにしない行動に出る杉咲花の、必死の勇気を絞りだすシーンには滂沱の涙が止まらなかった。
 
新人賞ではなく今年の全映画部門の助演女優賞に足る素晴らしい演技だと思う。
 
稀有な運命で双葉の元にやってくる子役の伊東蒼も素晴らしい。
 
母の愛を求め、焦がれる彼女の姿はもう涙無くしては見られない、彼女のシーンだけでコップ1杯分いったかもしれない 笑
 
中盤のロードムービー的展開の先にも、驚きが待っているが、それは観て欲しい。
 
人と人との繋がりというよりも、人と人と真正面からぶつかり合った上で抱き締める愛の大きさ。
 
「ああ、こんなに心から人と向き合ってきただろうか、、」と胸が苦しくなった。
 
そして彼女が弱り果てていきながら、命の灯火が仄かに輝く姿は、もはや演技を超えていて、鳥肌が止まらなかった。
 
中野量太監督が今後、日本映画の王道を牽引する一人の監督となることは間違いないと思う。
 
自身で脚本を書き、メジャー配給でもなく、その物語の強さで宮沢りえの出演を決め、
 
彼女を含めた全役者から、真実を感じさせる生の感情を引き摺り出した。
 
印象的なシーンを創り上げる映像センスも素晴らしい。
 
この物語をどうしても届けたいという、熱く一貫したぶれない姿勢でここまでたどり着いた奇跡に、感嘆の意を感じざるを得ない。
 
観終えて数日経っても、レビューが書けなかった。
 
どんなに言葉を弄しても、この映画に詰まった想いの熱さは表現できそうにない。
 
ただ、本当にこの映画は観て欲しい。
 
私は一人で観たが、できれば大切な人と。
 
そして、いまだに心の底にじわじわと暖かく燃えている炎は、決して消えそうにない。
 
愛を出し惜しみして、この世を去りたくはない。
 
しっかり生きねば、、、心底そう思った。