西南戦争で敗色濃厚となった薩摩軍が九州の山野を延々と逃げ落ちて行くのに象徴されるかのように、重く、長い作品のため、
読み返すつもりはありませんでした。
新幹線車中の時間つぶしに適当な本を切らしていた時に、取り敢えず一時凌ぎで読み始めたら、やはり名作!全十巻読み切らずにはいられませんでした。
時間は掛かりました。
読み始めたのは・・・かの国のレーダー照射事件が起こった頃に、征韓論に至る前のかの国の対応の場面を読んで苦笑いしたのを覚えているので・・・1年前ぐらいです。
さて本題。
西郷・薩摩を主軸に、明治維新のレビュー・総括から、かつての官軍、長土肥の反乱、そして、征韓論~最強・最大の西郷・薩摩の反乱を、後の日清・日露の将軍たちの若き日を織り込んで、読ませてくれます。
合間の余話も充実してます。
一番ハッとしたのが清水宗治(秀吉の備中松山城水攻めで切腹した)の子孫のお話。
毛利家は彼の子孫を大事にし代々長州藩の家老を務めさせた。幕末期の清水氏は先祖よろしく見事切腹して果てたとのこと。
確か、「花神」や「世に棲む日々」といった長州が主役の作品では語られてないはず。この”薩摩もの”で語られるのが、また良かったです。
もう一つ、坂本龍馬が1回だけ登場するのですが、表記は竜馬でした。「竜馬がゆく」で龍じゃなくて竜と表したのは、多くがフィクションであることを表していたと聞いたことがありますが、そうではないんじゃないかと思いました。
タイトルは、大河ドラマの印象が強く、若き西郷・大久保が倒幕を果たす生き生きとした様のイメージで固定していました。
実はそうではなく、西南戦争の薩軍の戦いぶりを古代の薩摩人=隼人になぞらえたものでした。
そして、大久保も暗殺され、最後の締めくくりの1行。
『薩摩における数百年のなにごとかが終熄した』
これを読んでいる間、偶然薩摩ものの本が読む候補に挙がって来てたのでした。
「大鳥圭介」の伊東潤さんの「西郷の首」
池宮彰一郎さんの「島津奔る」
年末年始にかけてこの流れでと思っていたのですが、急遽、原田マハさんの新作「風神と雷神」に行きます