今年も北関東のフモトミズナラを訪ねました。
 
【8/28 群馬県富岡市神成山】
神成山はフモトミズナラ林が広域に広がります。どんぐりはチョッキリが切り落としたものはあるものの、成熟したものは少なく、枝にもあまり成っていませんでした。やや不作といった感じです。
 
【9/4 群馬県桐生市吾妻山】
山腹は人工林も多く、フモトミズナラ林は山麓と山頂南側に多いです。どんぐりは並作~豊作でした。
桐生が岡公園で撮影。まだ青いどんぐりもありました。
吾妻山で採集したどんぐり。左上・中上のどんぐりはモンゴリナラに似ています。右上・右下はミズナラを大型化させたようなどんぐりです。左下・中下は殻斗の鱗片がやや長く、ミズナラとカシワの交雑種に似ています。
足尾山地は山々がつくられてから海に没したことがなく、アジア大陸と関連のある植物も残存しているそうです(参考文献:須藤志成幸 群馬の植物散歩―美しい花と森との出あい 上毛新聞社 1982年)。フモトミズナラには諸説ありますが、モンゴリナラとミズナラの交雑起源という説も納得できます。
 
【9/10 栃木県足利市石尊山・深高山】
石尊山~深高山はフモトミズナラの優占度がかなり高いです。カシ類の稚樹が見られなかったため、フモトミズナラが土地的極相となっているようです。
石尊山で撮影した個体。ハゴロモガシワ(カシワの園芸品種)ほどではありませんか、葉が深く切れ込んでいます。北関東ではこのような個体がしばしば見られます(東海では見なかったような…)。また、葉身長30cmクラスの大きな葉も見られます。
どんぐりはやや不作のようでしたが、青いどんぐりが成っていたため、少し早かったのかもしれません。
 
【9/10 栃木県足利市天狗山】
ここではフモトミズナラよりもコナラの方が多いです。石尊山・深高山と違って、シラカシ・アラカシ・スダジイの若木も見られます。
天狗山ではフモトミズナラがカシナガ被害を受けており、枯死した個体も見られました。北関東のフモトミズナラでの被害は初めて見ました。どんぐりは不作でした。
また、天狗山は昨年2月の山火事で枯木が目立つ場所も多いです。教科書的に言えば、アカマツ林→コナラ・フモトミズナラ林→シラカシ・アラカシ・スダジイ林に遷移するはずです。しかし、フモトミズナラの母樹があまり多くないこと、カケスが運ばない限り種子は長距離移動しないことを考えると、簡単に山火事前の植生に戻るのだろうかと思ってしまいます。
 
北関東のフモトミズナラの分布は、利根川の南側(南牧~富岡辺り)と北側(桐生~宇都宮辺り)でやや隔離分布になっています。そのため、北関東個体群の中でも遺伝的分化がありそうな気がします。