石垣島・西表島・沖縄島に行ってきました。何回かに渡って記事を書く予定ですが、最初はオキナワウラジロガシについて掲載します。
詳細な場所は非公開としますが、内陸山地の谷沿いや斜面の湿った所にはオキナワウラジロガシの優占林が見られます。
オキナワウラジロガシの葉。鋸歯は浅く全縁の場合もあり、小枝は暗褐色です。葉裏は灰白色で落ち葉で存在に気づくことが多いです。
オキナワウラジロガシのどんぐり。5年ぶりに拾いました。
全体的にはあまり落ちていませんでしたが、沢山のどんぐりを落とした個体も少数ありました。オキナワウラジロガシは堅果生産量が非常に少ないです(シラカシの5%くらいだと思います)。豊凶が激しく、堅果はリュウキュウイノシシの好物であるため、後継樹が増えるのだろうかと思ってしまいます。
堅果は3~3.5cmで、ずっしりと重みがあります。もっと小さい堅果もありました。日本最大のどんぐりで琉球列島にしかないため、どんぐり採集家垂涎の的でしょう。
ブナ科は重力散布型種子であるため、陸続きでないと分布域を拡大することができません。そのため、琉球列島にブナ科が分布することは、かつて琉球列島が大陸や日本本土と陸続きであったことを物語っています。また、島嶼では個体群が分断化され、種分化が生じやすいことが知られています。オキナワウラジロガシの起源は不明ですが、隔離された環境下で固有種に進化のでしょう。
石垣島内陸部の植生風景です。
イタジイ(オキナワジイ)・オキナワウラジロガシ・ギランイヌビワが優占し、オオバイヌビワ・タブノキ・イスノキ・イジュ・リュウキュウガキ・オオバギ・カラスザンショウ・リュウキュウマツ・ヒカゲヘゴなどが混生します。タブノキ・イスノキ・カラスザンショウは本土にも分布しますが、それ以外は本土では見られない樹種です。オキナワウラジロガシやイスノキは極相種で、自然度の高い場所でしか見られません。
琉球列島の森林の外観は照葉樹林ですが、本土(暖温帯)の照葉樹林とは構成種が異なります。ヒカゲヘゴ(中央)のような木生シダや、ギランイヌビワ(左・右上)などのイチジク属の樹種が多いのが特徴です。奄美以南は亜熱帯気候で年間を通して高温多雨のため、個人的には亜熱帯多雨林という呼び方の方がしっくりします。イタジイ(中央上)、オオバキ(右下)も写っています。
オオバギやリュウキュウマツは先駆種で、伐採跡地など撹乱頻度の多い場所に生えます。
オキナワウラジロガシのどんぐりは植えて育ててみます。今までにも何度か育てたことはありますが、何故か途中で枯れてしまい上手く育ちません。高温多湿な環境を好むため、本土だと育ちにくいのでしょうか?今回こそ、上手く育ってほしいです。