2024年11月25日改訂

奈良周辺のイチイガシとシリブカガシを訪ねました。奈良には昨年も訪ねており、昨年は春日大社→春日山原始林若草山コースを歩きました。春日山原始林はツブラジイ・ツクバネガシ・モミ・スギなどの林で、イチイガシは山麓部に集中していたため今回は春日大社周辺を歩きます。
 
【春日大社】
春日大社境内にはイチイガシが多く、幹周り3mを越える個体が33本(2019年3月時点)あり、市指定天然記念物となっています(春日大社ホームページより)。私が初めて春日大社を訪ねたのは2015年3月のことで、あまりのイチイガシの数の多さに驚きました。
まずは春日大社に参拝です。御朱印と白鹿のおみくじを買いました。
シカが沢山いますが、角が削り取られた個体が多かったです。シカはイチイガシのどんぐりを食べます(写真は2020年11月21日撮影)。
金龍神社入口の上の祢宜道のイチイガシ。天然記念物の立て札があります。
イチイガシは奈良盆地周辺の扇状地の極相種です。本州に分布するカシ類の中では最も生育標高が低く、開発の影響を受けてきたため現存する天然林は少ないです。
沢山のどんぐりが落ちています!
鹿苑の裏手にもイチイガシの巨樹があります。葉裏に黄褐色の毛があるため、見上げると独特の色になります。
飛火野にある2本のイチイガシ。
採集したイチイガシのどんぐり。個体数が多いため、多様な堅果形態が見られました。
奈良県では他に葛城市・笛吹神社、田原本町・村屋坐弥冨都比売(むらやにいますみふつひめ)神社のイチイガシ林が県指定天然記念物になっています。天理市・石上神宮社叢にもあるそうです。
  
続いてシリブカガシのある東大寺知足院に向かいます。
 
【東大寺知足院】
シリブカガシの優占林があり、アラカシと混生しています。イチイガシが湿潤で肥沃な場所に生えるのに対し、シリブカガシ・アラカシは土壌が浅い乾燥した環境に生えます。
シリブカガシの大木。あまり大きくならず、樹高は10~15mほどです。
シリブカガシは遠目ではアラカシと似ているため、注意して見ないと見落としそうになります。
 
このあと、奈良153系統バスに乗って州美台六丁目で下車し、木津川市・弊羅坂神社に向かいました。
 
【京都府木津川市・弊羅坂神社】
ここにもシリブカガシ林があると知って訪ねました。
植生は境内東側ではアラカシ、西側ではシリブカガシが優占し、コナラ・クスノキ・ムクノキ・エノキ・クロガネモチ?・ソヨゴ・ナナミノキ?・カナメモチ・カキノキ・スギ・サワラなどが混生していました。
シリブカガシ成木は多数見られるものの、後継樹は殆どありませんでした。
シリブカガシの樹皮。樹皮も樹形もアラカシに似ていますが、シリブカガシの方が滑らかです。
採集したシリブカガシのどんぐり。葡萄色で独特のどんぐりです。
 
シリブカガシは近畿地方では京都府・保津峡に大きな群落があるそうです。私は大阪府堺市・美多彌(みたみ)神社、和泉市・聖神社でも観察しましたが、この2箇所ではアラカシの方が優勢でシリブカガシは多くはありませんでした。シリブカガシ林が成立する環境がよくわかりません。
 
関東では見られないイチイガシ林・シリブカガシ林が見られて、異世界のようで面白かったです。