フモトミズナラの花を撮影しに、群馬県桐生市の水道山公園に行きました。吾妻山の麓にある公園です。

桐生市内では足尾山地(特に吾妻山山系に多い)と八王子丘陵に分布し、生育標高は150~500mほどのようです(参考文献:桐生市植物誌、桐生市自生植物目録)。鳴神山は標高980mなので、ミズナラ林になっていると思います。

 

私がここ数年、関心を抱いているフモトミズナラ。花を撮影するのは初めてのことです。

フモトミズナラの若葉は、葉の切れ込みが深いのが特徴的です。

昨秋は富岡市の神成山に行きましたが、どんぐりは全く見つかりませんでした。吾妻山も同様だったようで、今春発芽した実生は見られませんでした。2年目の実生は見られたので、2019年は結実したようです。

 

昨年発売された下記文献に、フモトミズナラのことが詳しく記されていました。

フモトミズナラは研究者によって様々な見解が存在しますが、著者は以下のような見解を示しているようです。

 

・フモトミズナラの根が斜行するという特徴を重視して、フモトミズナラを独立種としてQuercus mongolicoides (H.Ohba) Hirokiと命名。

・フモトミズナラの祖先種はモンゴリナラ(学名:Quercus mongolica)。日本列島が朝鮮半島を通じて大陸と陸続きであった時期に、モンゴリナラが日本列島まで分布域を広げていた可能性は十分考えられる。

・フモトミズナラは、東海地方に特有な丘陵地帯で起源した(300万年前以降)。フモトミズナラが生育する東海地方の丘陵の尾根は土地が瘦せており、極めて乾燥する。フモトミズナラは根を斜行させる性質を獲得したことで、土壌層が薄く、著しく乾燥するという厳しい環境でも生存が可能になったと考えられる。モンゴリナラはその後、消滅した。

・東海地方で誕生したフモトミズナラは、その後関東地方まで分布域を広げ、現在は中間地域の個体群が消滅してしまったと考えられる。東海地方に比較的近い長野県飯田市近郊にフモトミズナラの個体群が散在しているが、これは過去に分布域が東海地方から関東地方まで連続していたことを物語っている。

 

尚、フモトミズナラが桐生に自生しているのは、1億5千年前頃まで大陸続きであった日本列島が、地殻変動により海に沈んだとき、足尾山地は海に沈まなかった(足尾島と呼ばれる)ためという話もあるようです。桐生地区の植生の約40%が大陸系の植物で占められているそうです。

 

素人の私が東海・北関東のフモトミズナラを観察して気づいたのは、北関東のフモトミズナラの方が葉・堅果が大形であったことです。隔離分布になっているためだと思いますが、今後研究が進んだら別亜種のように扱われるのでしょうか?もしそうなったら、長野・愛知・岐阜・三重県のものはトウカイナラ(東海楢)、群馬・栃木県のものはリョウモウナラ(両毛楢)なんて和名が良いんじゃないかなって個人的に思います。