千葉県長南町の笠森寺自然林(国指定天然記念物)です。アクセス方法は、茂原駅南口・上総牛久駅からバスに乗り、笠森で下車。または、茂原駅南口・上総鶴舞駅からバスに乗り、深沢切割で下車して徒歩約15分です。
笠森寺は延暦3年(784年)に最澄により開かれ、延暦年間から禁伐林とされてきました。笠森寺自然林の注目は、千葉県で重要保護生物に指定されているイチイガシが1本だけ生育している点です。
高木層はスダジイ、ウラジロガシ、スギが優占しています。アラカシ、ツクバネガシ(少数)も見られます。
重要文化財の笠森寺観音堂です。清水寺を彷彿させる木造建築です。
観音堂左側の階段を下り、階段が直角に曲がる場所の右手にイチイガシがあるようです。
散策路から離れた谷部にイチイガシがありました!
ズームしてみると確かにイチイガシです!1本だけしかありませんが、後継樹は育っているのでしょうか?
根元が癒着した三本杉です。
千葉県では、イチイガシは房総丘陵南部の降水量の多い地域(清澄山系)と笠森に隔離分布しており、笠森が分布の北限になっています。
茂原市の国府関遺跡での調査によると、弥生時代終末から古墳時代初頭の茂原市東部~長柄町一帯の低地から丘陵地には、イチイガシの優占林が存在していたと考えられているようです。しかし、イチイガシが生育する谷部の土壌が深く、湿潤な場所は水田耕作に適しているため、水田開発によって減少して今日では限られた場所でしか見られないようです。
<参考資料>
・弥生時代終末から古墳時代初頭の房総半島中部に分布したイチイガシ林(千葉大学園芸学部学術報告)
「房総の植物(藤平量郎・うらべ書房・1986年)」では、イチイガシは元清澄山の南側斜面に多いと記されていました。私は金山ダム~元清澄山~保台ダムにイチイガシを探しに行ったことがありますが、スダジイ・ウラジロガシ・アカガシ・モミ・ツガなどの林でイチイガシは見つかりませんでした。登山道から離れた谷部に生育しているのでしょうか?
高宕山にもいつか探しに行きたいと思います。