横浜市内のツクバネカシ生育地に行きました。ツクバネカシは関東ではやや珍しい種ですが、横浜市内の社寺林では比較的多く見られます。
【横浜市港北区・師岡熊野神社】
社叢は県指定天然記念物です。アカガシ林とされていますが、実際にはツクバネガシでアカガシは1本もありません(師岡熊野神社から700mほど東の杉山神社辺りにはアカガシがあります)。境内はツクバネガシを優占種とし、オオツクバネガシ・シラカシ・スダジイなどが混生する照葉樹林です(2021年11月21日写真追加)。
師岡熊野神社で最大のツクバネカシです。アカガシと表記された札が立っています。
別アングルからの撮影です。
本殿裏手にツクバネガシの優占林があります。私が知る限りでは関東最大のツクバネガシ群落です。
若木も多く見られ、更新順調です。
中にはハナガガシそっくりの葉をつけたツクバネガシもありました!ハナガガシはツクバネガシが変化したものというのも納得です。アカガシ・オオツクバネガシ・ツクバネガシ・ハナガガシの葉形は連続変異のように感じます。
また、師岡熊野神社には少し変わったスダジイがあります。
幹が真っ直ぐに伸びているのです。スダジイの幹は曲がりくねることが多いのですが、師岡熊野神社には幹が通直でツブラジイに似た樹形の個体があります。
スダジイの樹皮です。比較的若い個体です。
参考までに、ツブラジイの樹皮の写真を載せます。ツブラジイの樹皮の割れ目の色は、スダジイよりも黒っぽいです。ツブラジイは関東には分布しないので、関東でシイを見たらスダジイと判断してほぼ間違いないです。
【横浜市南区・定光寺】
2020年11月に初訪問しました。
ツクバネガシの大木がありましたが、ここでもアカガシと表記された札が立っていました。境内はツクバネカシ・オオツクバネガシが優占して、スダジイが混生する照葉樹林でした。
また、定光寺ではカシナガ被害を受けたツクバネガシが多く見られました。カシ類では初めて見ましたが、被害木の樹勢に異常があるようには見えませんでした。
この後、弘明寺公園に寄りました。弘明寺公園はアカガシが優占種で、ツクバネカシ・オオツクバネガシ・スダジイ・コナラ・クヌギ・タブノキなどが見られます。しかし、コナラはかなりの数がナラ枯れで枯死していました。
弘明寺公園のアカガシも、穿入被害を受けた個体が多かったです。孔道の開口部からは樹液がしみ出しています。
しかし、枯死しているアカガシはありませんでした。どうやら、ツクバネカシ・アカガシは穿入被害を受けても、枯死することは少ないようです。
ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシの葉を採集して比較してみました。
左から順に、ツクバネガシ・オオツクバネガシ・アカガシの葉です。葉の大きさは、ツクバネガシが葉身14cm・葉柄0.4cm、オオツクバネガシが葉身14.5cm・葉柄1.8cm、アカガシが葉身16cm・葉柄4.1cmでした。この3種の詳しい比較については、以下の記事をご参照いただければと思います。
横浜市では他に、青葉区の鉄神社でツクバネガシ(アカガシと誤認されている)、港北区の篠原八幡神社でもアカガシ・ツクバネガシ・オオツクバネガシが見られます。
関東ではツクバネガシは内陸丘陵地~山地帯下部、アカガシは海沿いと内陸山地に分布する傾向があり、ツクバネガシはアカガシに挟まれるような分布形態となっています。