群馬県安中市の碓氷峠に行きました。昨年初訪問し、関東では稀なナラガシワが多いことに衝撃を受けた地です。また、東京・埼玉のナラガシワ自生地は低地の河川沿いですが、碓氷峠では低山の沢沿いにあります。

今回は横川駅からバス(季節限定運行)で熊ノ平駐車場まで行き、ナラガシワや碓氷峠の植生を観察しながら横川駅まで歩きます。

 

旧熊ノ平駅(標高約670m)です。横川駅から旧信越本線沿いに続くアプトの道は、ここで終わります。アプトの道はトンネルが多く植生観察ができないため、中山道を歩くことにします。

旧熊ノ平駅~めがね橋の中山道です。中山道沿いの地形は沢沿い~斜面で、周囲は落葉広葉樹林です。

中山道沿いでは、オニグルミ、シデ類、イヌブナ、クリ、コナラ、ミズナラ、クヌギ、ホオノキ、ケヤキ、イタヤカエデ、オオモミジ、メグスリノキ、トチノキ、ミズキ、フサザクラなどが見られました。標高は約600mで暖温帯と冷温帯の樹種が混生しているため、気候帯は中間温帯でしょう。人里から離れた場所にも関わらず、クヌギがあったのは意外でした。優占種が決めがたいですが、ケヤキやイタヤカエデが特に多かったです。

 

めがね橋(標高約580m)です。レンガで造られた立派な橋です。

めがね橋からの眺めです。紅葉と青空が綺麗です。信越本線の横川~軽井沢間が廃止になったのは1997年10月のことですが、向こうに見える鉄橋にはまだ電車が走っていそうな雰囲気があります。時間が止まったような錯覚に陥って感慨深いです。

めがね橋まで来て初めてナラガシワが出現しました!大形の葉・太い枝・粗い枝振りが特徴で目立ちます。そして、ナラガシワとともにスギ人工林も出現します。

 

碓氷湖(標高約520m)にあるナラガシワの大木。碓氷湖では、ナラガシワとイヌブナ・ミズナラが同所的に生育しています。イヌブナ・ミズナラは碓氷湖辺りが生育下限になります。碓氷湖は人造湖なので、ダム建設前のナラガシワは沢沿いの斜面に生育していたことになります。

この個体は鋸歯が浅めです。

 

碓氷湖からはアプトの道を歩きます。峠の湯~横川駅付近ではナラガシワが多くなりますが、スギ人工林が多いため天然林は少ないです。

 

ナラガシワは、碓氷川沿いの斜面や林縁に生育していました。スギ人工林化される前はもっとあったと思われます。

規模は小さいものの、天然林ではナラガシワが優占種になっています。麻苧の滝自然公園の方にもナラガシワがありますが、今回は行きませんでした。

尚、どんぐりは不作でした。東京・埼玉では結実していましたが、群馬のナラガシワは2年連続で不作です。

 

今回の調査では、ナラガシワがミズナラ・コナラよりも低標高域に生育することがわかりました。標高が高い所から順に、ミズナラ・コナラ→コナラ・ナラガシワの林になりました。ナラガシワも落葉樹なので寒さには強いはずですが、ミズナラ・コナラよりも暖地性のようです。